[銀魂]土方さんが総悟に耳かきするだけ
- ナオト 藤咲
- 10 時間前
- 読了時間: 4分
「土方さぁん耳かきしてくだせェ。」
すぱーん、と小気味いい音と共に襖を開け放ちながら18の青年がおおよそ言わないであろうお願いを告げて現れた弟分を、書類に向き合っていた土方は眉を顰め軽く睨んだ。
「何言ってんだテメー、つか今勤務中だろうが。サボってねぇで仕事に戻れ、俺ァ忙しいんだ。」
「いや昨日からねぃ、なーんか耳ン中がガサガサしてやして。気になって夜しか眠れねーんでさ。」
「それ問題ないよね?夜快適に眠れてるよね?むしろ昨日も昼寝してサボってたよね君?」
「てなわけで耳かきお願いしや〜す。」
目頭を抑えながら呆れた声で小言を言う土方をまるっと無視し、ゴロリと横になる沖田。その頭は土方の膝に乗せられ、耳かきされる気満々である。
土方はグイグイと頭を押しながら、つっけんどんにどけコラと怒気を含ませた声で言ってみるがまるで効果はない。
むしろ首に力を込めて意地でもどかされまいと全力で抵抗をするのが沖田という男である。
しばらく無言のせめぎあいが続いたが、いつものように結局土方が折れた、深いため息とともに。
「はぁ.......お前なぁ、もう18なんだから耳かきくらい一人でできるようになれよ、ったく.....。」
筆をコトリと机に起き、引き出しを開け土方は何かを取り出した。
それは、小さめの筆箱のような物。
「....じゃあまず、耳のマッサージと外側の掃除から。動くなよ。」
「へい。」
沖田の返事を聞いた土方は、その箱をぱかりと開けて小さなボトルを取り出す。中に入っている、ややとろりとした液体を手に少しだけだした。
ふわりと金木犀の香りが柔らかく辺りに漂う。
土方はそのオイルを両手でそっと広げて、沖田の耳を優しくさすり始めた。
「どうだ?痛くねぇか。」
「大丈夫でさァ...あ、そこもうちょい強く押してくだせェ。」
「おう、痛み感じたら言えよ。」
耳殼を優しくさすりながら、言われた場所をきゅっ、きゅっ、と少しだけ強く押す。
優しく障子から差し込む昼の光、柔らかく漂う金木犀の香り。
心地よいマッサージも相まって、沖田は早々に眠たくなってきてしまった。
「土方さぁん....寝てもいいですかィ....。」
「まだ駄目だ。せめてマッサージ終わるまでは起きてろ。」
「ちぇ....。」
こんなに心地がいいのに、眠ってはいけないだなんて酷なことを言う。口の中だけでしねひじかた、と悪態をついた。
余りに小さな声だったせいか、マッサージに専念している土方には聞こえなかったようで、反応はない。
心地よい強さで擦られる耳から伝わるじんわりとした温かさ、ゆっくりとほぐれていく耳の凝り。
オイルの優しい感触と香り、その奥にほんの少し土方自身のタバコの匂いがする。
すべてが気持ちよくて、安心して、沖田は閉じるまぶたに抗えそうもない。
「......ん、よし。こんなもんか。次は外側の掃除だ。総悟お前、この辺全然掃除してねぇだろ。溜まってんぞいろいろ。」
「......別に、んなトコ掃除、しなくたって....死にゃぁしやせんし.....。」
「バカおめー、そういうとこから病気になったりすんだぞ。少しは気にしろ。」
土方の軽い小言に返事代わりに沖田はふあぁ、とあくびを返す。
手に残ったオイルをハンカチで拭いた土方は、先の形状が少し変わった綿棒を取り出した。
その綿棒を、そっと耳殼に差し込む。耳のみぞに沿うように動かしながら、溜まった汚れをからめとっていく。
「こりゃ中々だな....ったく、どんだけサボってんだ....。」
「あ~そこ、そこめっちゃ痒かったんでさァ....。」
「そりゃそうだろうな、結構やべえぞこれ。こんなん溜まってたら女にもドン引きされちまわァ。」
「マジでか。」
「マジでだ。」
小声で軽口を交わしながら、手際よく汚れをすくい取っていく。
ところどころこびりついてしまった耳垢は、少し強めにこすって落としていく。
強すぎず、弱すぎない力加減。慣れた手つきでどんどん耳垢はこそぎ落とされていき、そして沖田の眠気もどんどん深くなっていく。
そして、耳殼の耳垢をすべて落とした頃には、肝心の耳かきをする前に、
「.......ふう、大体こんなもんか.....ッたく、トイレにこびりついてるクソくらいしつけぇ耳垢だったぜ....。おい総悟、次は...って、」
「..........ぐぅ。」
沖田は土方の膝の上でいびきをかいていた。
普段のいつも己の命を狙ってくる憎ったらしい面はなりを潜め、あどけない寝顔を晒している。
ここ最近ついぞ甘えることなどせず、むしろ土方の寝首をかくためにあれやこれやと仕掛けてきた弟分の健やかな寝顔を見て、土方は微かに笑む。
「......仕方ねぇな、大サービスだぞ。」
ぽん、と頭を軽く撫で、綿棒をゴミ箱に捨てる。筆で残ったカスをさらりと払い、一番細い耳かきを箱から取り出した。
きゅ、と軽く耳を引っ張り中を覗いて、ほんの少し眉を顰める。
「......こりゃぁ、強敵だな。」
小さくつぶやいて、ため息をつく。耳の中の汚さもそうだが、結局仕事を中断してまで、この憎たらしくも放っておけない弟分を甘やかしてしまっている。
つくづくヤキが回ったもんだとひとりごちて、そっと耳かきを耳穴へと差し込んだ。
かりかり、かりかり。
昼下がりの副長室に、かすかな音がこだまする。
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