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​白 銀 の 戦 慄

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【銀魂】山崎退

  • 執筆者の写真: siversou
    siversou
  • 7 時間前
  • 読了時間: 5分

以前から書きかけに置いてあったものの、間の文の沖田隊長と近藤さんのストーリーがなく。

土方さんのストーリーはあれど、どう支えたいと思っているかみたいな、山崎退の真選組隊士としての根幹となる軸の部分を書きたかったのに、この話はごっそりそちらが抜けており、最近想像力が貧困な為に間の思いつかず構想メモにとどめたままでしたのでこちらにて供養させていただきます。




かつてはマウンテン殺鬼と名乗り、己の底の浅さを知らずブイブイ言わせていた黒歴史がある。

しかし、ある日江戸で募集がかけられた「浪士組」へ加わり、そこで出会ったある男たちに山崎は気圧され、怖気づき、それまでの威勢を途端に吹き飛ばされ、マウンテン殺鬼の名乗りを即座に撤回し、山崎退と名乗り直した。


それから山崎は、土方や沖田に怯え、決して逆らわず、なるべく無難に過ごそうとやってきていた。

沖田はその幼さからは信じられないほどの剣の腕を持ち、センスがあった。

自分には到底かなわないほどの実力だった。

そのくせして、山崎が怯えるもう一人の男、土方にはしょうもない嫌がらせばかりをして、人が怖がったり困ったり、慌てふためく姿を楽しむ、生粋のドS気質だった。

そんな沖田に、数度姉を名乗る、美人な娘が訪れているのを見たことがある。

最初に見たのは、斎藤終という男を送り届けに来たときだった。

武州で取り残されていたからと、人と言葉をほぼ交わさないと言っても過言ではない斎藤を気遣い、ミツバは共に江戸まで来たらしい。

その際に、ミツバの意味深な目線が土方に注がれているのに気づき、また、土方もミツバを少なからず意識しているのに山崎は気づいた。

ミツバが武州へ帰ったあと、沖田の土方への嫌がらせが暫く過激になっていたので、沖田と土方の関係性をなんとなく山崎は察したのだ。

沖田はミツバが帰ってから、土方への嫌がらせだけでは憤りがはらせなかったのか、姉とともに武州から来た男、斎藤に打ち込みを頼み、二人が打ち込み合っている姿を見た。

斎藤終という男の剣も、沖田と並ぶほどに早く、まさに風のような剣の使い手であった。


一方、山崎は土方がミツバを想っているような素振りを見せたのに気づいたが、彼らと同郷の者と、自分以外がそれに気づいたわけではなかったようだ。


自分を一瞬で気圧した男が、何を思って好いている娘を、そして、娘に好かれていると察していながら、距離をとるような行動、態度をしているのか。

山崎は理解ができず、不審に思った。

浪士組として何度かお上より任務を言い渡され、それをこなしていく内に、山崎は土方の剣が、沖田とは違い、荒々しい剛の剣だと思った。

沖田や斎藤の剣は、いうなれば柔の剣だ。

軽やかに、素早く、いっそ舞のように風と共に振るわれる剣。

それに比べ、土方の剣は荒々しかった。

力強く、風を断ち切るように、敵の刀ごとへし折らんとするかのように。

山崎はそこに、なにか、執念のようなものを見た気がした。

土方の剣は必死なのだ。何に、と言われても山崎には分からない。

ただ、その分からない何かのために、我武者羅になって剣を振るっている。

そこに見惚れる美しさなんてない。

それなのに、目が引き付けられる。そんな剣だった。

山崎は気になった。その正体の掴めない何かが、何なのか。

気になったら行動に移さずにはいられない、案外耐えしょうのない山崎は、ある日土方に聞いた。

「土方さんの剣って、同郷とは聞きましたが、沖田さんたちとは随分違いますよね。どう違うのかって聞かれたら、具体的には言えませんけど」

「俺は近藤さんたちと同郷ではあるが、同門と言うには、歴が浅い後輩だからな」

「あー、だから沖田さんのことを先輩って呼んでるんですね」

「あぁ」

「……でも、俺が感じたのはそれとはまた、ちょっと違う気がするんですよね」

「そうか。ならそれは、武器(これ)を手にした理由が違うからかもしれねぇな」

「え?」

「俺はあいつらみたいに、純粋な気持ちで剣の道に進んだわけじゃねぇ」

「俺はただ…………」

そこで言葉をきった土方は、一度目線を地面へと落として、言った。

「手段がこれだったに過ぎねぇ。俺は、邪魔になる奴をたたっ斬るだけだ」

その時、土方の瞳の奥に燃え盛る炎を見た気がして、山崎は息を呑んだ。

自分の話に言葉を詰まらせて固まった山崎を見て、土方は自嘲するかのように笑って踵を返す。

「休憩はこの辺にして、訓練に戻るぞ」




***



普段は脳天気な面して、周りに振り回されているだけに見えた男が、その実、ここにいる誰よりも懐が大きく、誰よりよく周りを見て、その上ですべて受け入れ、自分の仲間だと豪語する。

悪童と言って差し支えないほどやんちゃな男たちが、何故この男に惹かれ、その背についていこうとするのか。

この男は受け入れてくれるからだ。例えどんな悪たれ小僧だろうが、小悪党だろうが、人殺しだろうが。

男はそのでかい器で、すべてを受け入れ、笑ってくれる。

居場所になってくれる。

そして、どこに進めばいいのか、どっちに進めばいいのか分からない自分たちに、道を示し、引っ張ってくれる。


山崎はそこで初めて、近藤勲という男に惹かれ、この人についていきたいと思った。

「山崎、お前は周りを観て、そこから察する力に長けている。真選組が正式に立ち上がったら、真選組の監察をやらないか?」

力強く歯を見せ笑う近藤に、山崎は元気よく返事をした。

「はい!! この山崎退、謹んでその任、引受させていただきます!」

「そうか、引き受けてくれるか! よろしくな、山崎」


この時より、山崎は真選組の監察、山崎退としての人生を歩み始めた。

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