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​白 銀 の 戦 慄

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【銀魂】河原

  • 執筆者の写真: siversou
    siversou
  • 10 時間前
  • 読了時間: 2分

銀魂のSSを書くための「お題」をくれ、と言って出されたのがこちら「河原」。

河原で思いつくイメージ、書きたいと思ったのが、親の心子知らず回のここの幕間のみでしたので、SSとして短い短文を書かせていただきました。



 人気のない夜の時間。

 町民の姿も見えない街はずれで、バシャリと川の中から何かが這い上がる音が響いた。

 夜空の虚像を映す水面が波打ち、次いで静かに凪いでいく。

 川の中から這い出た人物は、夜陰に紛れて光の当たらぬ橋の下へと体を滑り込ませた。


「……っ」


 左脇腹から滲んでいる赤が白い布地をじわりじわりと広がっていく。

 それに顔を歪ませたのは、全身に濡れ鼠になった男だったが、男は周囲に人の気配がないのを確かめると、水の滴る服を絞って空を見上げた。


「あーあ、これじゃ、あいつらにドヤされっちまう」


 全身濡れた状態で家に戻ろうものなら、何を言われるか。

 リミットは「襲名披露」が行われる時分まで、自分の生存を悟らせないこと。

 それまでに、自分の存在が生きていると勘づかれると、相手は本物のヤクザ集団。二人にも迷惑をかけることになりかねない。

 今は帰りたくても帰れない状況にあると言ってもいいだろう。

 男は暫くの間月を眺め、深く溜息を吐いた。


「ヅラんとこの部下、適当につかまえるか」


 仮にも攘夷派の一派閥の総大将をしている幼馴染は、前触れなく急に現れるくせしてその所在は常に不明なまま。

 こういう時に連絡を取りたくなった時の常套手段は、部下に聞くのが一番というのが男の中での認識になっていた。

 こういう時は非常事態だ。あいつの所で暫く身を潜めて、着るものもあいつなら不法侵入でウチからくすねてこれる。

 今後の方針を決めた男は、気配を殺し、再び闇の中へと姿を消した。


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