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​白 銀 の 戦 慄

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執筆者の写真siversou

【鬼灯】メモの詰め合わせ

メモ1


 日本地獄で働いている獄卒には、良いことか悪いことか、ワーカーホリックが多い。

 日本地獄勤務、閻魔大王付補佐官──鬼神鬼灯。

 彼は大変優れた獄卒である。

 あまりの忙しさに垂れ気味な上司の尻を、彼はその言葉のまんまに蹴手繰って「喝」を入れる。そして隙あらばサボろうとする上司を日夜目を光らせて監視。

 自分は自分でその合間にキッチリと書類整理を終わらせるのだ。

 書類整理だけが彼の仕事……と思っている輩ももしかしたら新人獄卒の中にはいるかもしれない。しかし、彼は書類整理以外の仕事にも尽力し、その力量は大半の者には周知の事実で、彼が「私も日頃の鬱憤を晴らしたいんですよ。亡者たちにはそのための犠牲に……」と言おうものなら背中に冷や汗、顔を青ざめさせて振るえるほどだ。


「日本獄卒足る者、目指すべきは鬼灯様だ」などと獄卒の中で語られるのもそんな彼ならむしろ当然のようにさえ思えてくる。

 しかしだ、そんな彼──鬼灯にも一つだけ、一般獄卒たちに劣っているところがある。

 

 『鬼神鬼灯は、純粋な鬼じゃない』


 鬼灯は元はただの子供、人間だった。

 孤児(みなしご)として村人からは邪険にされ、最期はくだらない理由で生贄にされ、死した。

 「丁」と呼ばれていたその存在は自分が生贄にされる理由を幼いながらも正しく理解し、村人の言葉を受け入れた。

 ただ、丁も全てを納得し、善良な心でそれを甘受したわけじゃない。

「みなしごだから」

 たった、たったそれだけの理由だった。たったそれだけの理由で、鬼灯昔、命を奪われた。



メモ2

(上部に「紫陽花」「月下美人」「移り気」「六月」とあるので、おそらく鬼灯と言う花と絡めた小説を書きたかったと思われる)


 雨が降り続いている。

 じめっと重苦しい、そのくせ、妙に落ち着いた雰囲気を漂わせる雨が。

 紫陽花の花は鮮やかに色づき、鬼灯の花はポタリと雨粒を落とす。

 古風な扇子を連想させる紫陽花。

 あの世の者を照らし導く提灯とされた鬼灯。

 こんな時期に好んでその花を咲かせる


ここで切れてるのは殺生だろと自分でツッコみをいれたメモだった。



メモ3


「白澤さん、ちょっといいですか?」

 大王の湿布薬を届けに第五神殿まで行った白澤は、大王に薬を届けた後、鬼灯に呼び止められた。


「なんだよ。お前にしちゃ珍しい」

「なにがですか?」

「いや、普通に僕を呼び止めるなんてさ」

「あぁ、すみません。あなたが望むなら今すぐ金棒を取ってきます。マッハで」

「望んでない望んでない! 理由は分かった。珍しく殊勝な態度だと思ったら何か投げつけたくても投げるものがなかったからだな?!」

「はい。一応頼みたいこともあったので、今日くらいは見逃してやろうかと魔が差しました」

「僕にとってはお前の言う「魔」が光明だよ」


 忌々しそうに肩を落として白澤は言った。


「……で、なに? 僕に頼ってまたろくでもないことに僕を巻き込むつもりじゃないだろうな」



メモ4


 住は地獄。

 閻魔大王付きの第一補佐官、鬼の中の鬼、鬼神「鬼灯」

 あいつはハシビロコウも真っ青の朴念仁のくせして、頭も良いし仕事もできるし、認めてはないけど、顔の造形も僕に似て随分整っている。

 あ、いや。ハシビロコウは青いのが普通だったけ。

 ごめん、さっき出したハシビロコウの例えは訂正するよ。

 そこはハシビロコウじゃなくて金魚草って頭の中で変換しておいて。

 悔しいけどさ、僕の顔のパーツと似てるんだもん、アイツ。

 本当に時々だけど、何億年も生きてきた僕でさえ、たまに「格好いいな」って思う時がある。

 願わくば、僕に会うたびに振るってくる暴力がなくなってくれればいいのに。

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