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​白 銀 の 戦 慄

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執筆者の写真siversou

[うたわれるもの]感覚共有

「はぁ……」

 今日は朝から一日ツイていない。

 ココポには早朝からじゃれつかれ、背中から強烈な突進を受けて倒れた拍子に顔面まで強打し、オシュトルに仕事の呼び出しを受けて昼前に向かったオシュトル邸では、自分の軽口にまたネコネが腹を立て「兄様に失礼なことを言うなです!」と自分の脛を蹴ってくれた。

 いや、ネコネに脛を蹴られるのはもう慣れっこのことではあるし、それ事態は自分の軽口が原因だと自覚もあるので痛いことを除いては遠慮のないネコネとの距離感に多少なりとも嬉しさを感じなくもないので、別に構わないと言えばそれは構わないのだが。ただもう少し、手加減してくれれば良いのになとは思わずにはいられない。自分の性格は変えられないし、どうせ脛を蹴られるのを避けられないのならばせめてそのくらいは夢を見ても良いはずだ。

 あー、いや、違うな。問題はそこじゃない。

 今日はネコネに脛を蹴られたその"後"が問題だったのだ。

 何時ものようにオシュトルは自分とネコネのやり取りを微笑ましそうに笑って見ていたのだが、今日は痛みでついよろめいてしまった自分が、オシュトルの片付けていた書簡の山に運悪くぶつかってしまい、それを倒してしまった。

 当然書簡の山は勢いよくゴロゴロと机の上を転がり、その内の幾つかがオシュトルの広げていた筆や墨へとぶつかった。

 オシュトル自身も自身に向かって倒れてきた書簡の山に対処していたせいで、どうやらそちらにまでは気が回わせなかったようで。自分たちが気付いた時にはもう、書簡の数本が黒塗り状態となっていた。

 当然、それは右近衛大将としての大切な仕事の一部だったわけで。

 流石のオシュトルもこれにはキレた。

 自分は決して忘れない、あの時の不気味なまでにいい笑顔を作っていたオシュトルの姿を。

 顔は笑っているのに奴の後ろには禍々しい鬼の面が見えた。奇しくもその鬼の面は一本角で、なるほどイメージの元はオシュトルの仮面か、なんて呑気に考えていたあの時の自分がバカだった。

 そんな下らないことを考えている暇があったら、万に一つも逃げ切れる可能性はなかったのだが、取り敢えず逃げるが勝ちで逃げの一手をとっておけば良かったのに。

 その後、自分は抵抗する間もなくオシュトルに仕事を押し付けられた。

 しかも、三つ。三つもだ。

 溝浚いだけなら何時もの事とため息を吐くだけで終われたのだが、今日はそれの他に宿屋の雑用と、その近辺全域の清掃を申し渡された。

 ただでさえ体力のない自分に与えられたその仕事量だ。

 もう、その後のことは察してもらえるだろう。

 宿屋の雑用には馬の世話も含まれており、ココポでの悲劇を今日は何度か繰り返えす羽目にもなった。

 お陰で鼻の頭がヒリヒリズキズキしてまだ痛い。体もだるいし、正直明日の仕事は仮病を使って休みたいくらいだ。

 まぁ、そんな事を言おうものなら、今度はクオンからの手痛い"おしおき"を受ける羽目になるのだろうが。

 背中も変な風にダメージを受けたのか、未だにツキンツキンと骨に響く鋭痛のような、ぐわんぐわんとなる鈍痛のような感覚が残っている。

 もうため息を吐かずにおられない。

「はぁ~~~~~~…」

 先程よりも更に長いため息を数秒かけて吐き出したハクは、そこでさっきからずっと自分を労るために足を按摩してくれていたウルゥル、サラァナと目があった。

「心労……?」

「どろどろと一人で処理しきれない淀んだものが溜まっているようでしたら、私たちが全てお引き受け致します。なんなりと仰ってください」

「お前たちはまた……妙な言い方をするな」

「では、何か悩みがあるわけではないのでしょうか?」

「ため息が深かった。主様は相当疲れている」

「違いましたか?」

 手を休めず按摩を続けたままハクの目を見てそう伺ってくる二人に、ハクは「違う」とは言えず、二人にどう言ったものかと暫し思案する。

「…………いや、別に大したことじゃないんだが……もう少し自分の扱いと言うか、自分の体力のなさとかをオシュトルやクオンには考慮してもらいたいんだがなぁ、と思ったり思わなかったりしてだな」

「なるほど、理解した」

「主様はそう思いはしたものの、現状を考えて解決策はまずないだろうとご自分の中で決めつけ、諦めておいでなのですね」

「お前たちの自分に対する理解の具合がたまに怖い」

「私たちは主様のもの」

「主様のために私たちは存在していますから」

「いい加減それにはもうツッコまんからな」

「「?」」

 顔を見合わせ、一見純真そうな目で同時に首を傾げる鎖の巫二人の反応に、ハクはもう何も言うまいと口を閉ざした。

 ハクがその後に言葉を続ける気がないのを察したウルゥルとサラァナは逆に、話を戻すためにハクへ再度口を開く。

「私たちの呪法を使えば、主様の望みは叶えられる」

「私たちが使える呪法の一つに、使用する際に幾つかの制限が伴ってしまいますが、主様の望みを実現できるものがあります」

「なんていうか……便利だな、呪法」

「そうでもない」

「この呪法は"制限"が厳しく、戦闘等では主様のお役に立てることができません」

「だからこんな事でもないと役に立たなかった」

「制限が厳しいといっても、相手の承諾さえあればこの呪法は簡単に掛けられます」

「「どうされますか?」」

 もし本当に自分の苦労と言うものを少しでも理解してもらえる可能性があるならば。

 もし、その呪法に何のデメリットもないのであれば……。

 ハクは自分の意思を問う二人の視線に暫し沈黙し、数秒悩んだ末にこう言った。

「その呪法についてもう少し話を聞かせてくれ」








何かの呪術でハク殿とウコニキの痛覚が共有してしまってハク殿がちょっとした怪我をしてしまい本人はケロっとしているのに尋常じゃない痛みがウコニキに伝わってくるのください。


毒でもなにか食らったんじゃないかと調べてみるがそういう形跡はなく、本人に聞くと。普通こんなもんだろ、と言われ。無理してるんじゃないかと思わずちょっとだけ強く(それでも本人的には軽く)ハク殿の腕を掴むとめっちゃ痛くてうずくまるウコニキをくださいッ!!ウオアアアー!!


あまりにもハク殿がケロッとしているので(もしかして感じ方に差があるのかも?)とウルサラに聞くと無情にも「差はない。主様が感じてるのそのまま」と言われてしまい青い顔するウコニキ。その時背中に激痛が走る!視線の先には、ココポにじゃれつかれ圧し掛かられたハク殿がーー!ください



「――――――成る程、ハク殿の望みは理解した。つまりはハク殿が現状改善を理由に鎖の巫のお二方の御力を使い、某との感覚を暫く繋げたい、と。そういうわけであるな?」

「そう言うことだ」

「その申し出、却下しよう」

「何故だ!?!!」

「某にとって好ましい状況になるとは到底思えないのでな」

 




という下書きが残っていましたとさ。

(続きはどこだろうか)

アニメうた偽放送記念として今日のこの日に供養。

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