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​白 銀 の 戦 慄

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執筆者の写真siversou

[アイドリッシュセブン]うちのリーダー

「明日は大和さんの分も弁当作るから、よかったら持ってって」

「俺の分はいいよ。それより、イチとタマの方を優先してやって」

 皆でテーブルを囲った夕食の後。後片付けをしながら大和さんに言った俺の言葉に、大和さんはそう言って温かな笑みを浮かべて言葉を返した。

 弁当なんて、二人も三人も作る手間はそう変わらないって言うのに、大和さんはきっとそれを理解した上で言っている。

 大和さんは明日、日の出前にドラマ撮影で地方へ行く予定だ。

 そんな時間から地方へ行くとなると、コンビニも場所によっては品揃えが悪かったりして満足に飯が買えない可能性がある。それでも俺たちアイドルの資本はこの体だ。健康管理は特に気を遣うとこで、その基本となるのが寝食だと俺は考えている。だからこそ、の提案でもあった。

 俺たちの中でも、大和さんは仕事の入り方によっては集中的にスケジュールが詰まっていたりして、満足な休みがとれていないことを俺たちは''みんな''知っている。そこで一織を中心に、大和さんを抜いた作戦会議で昨日決まったのが、この『弁当作戦』。

 俺の作る弁当で栄養管理の方はもちろんのこと。俺たちのリーダーは、控えめに言っても俺たちIDOLISH7のことが大好きだ。そこで、メンバーが日毎に俺たちのリーダーに向けて、一言メッセージを弁当につけて大和さんを元気づけようって言うのが、今回の提案の発端だ。

 ここで大和さんの笑顔に負けて「ハイそうですか」と引いたんじゃ、俺の気も収まらないし、なによりみんなに申し訳が立たない。

「遠慮すんなよおっさん! 料理なんて二人も三人も作る手間はそう変わらないの、大和さんだって知ってんだろ?」

「ま、手間はそうだけどさ」

 そこで含みのある返しをする大和さんに、俺は最後の食器を洗い終えてから視線で続きを促した。

「……やっぱりさ、あいつらには少しでも出来立てに近い時間で食わせてやりたいだろ。俺の出る時間に合わせて作るってなると、いつもより時間が経った弁当をイチとタマが食べることになる」

 だから俺のはいいよ、そう言ってへにゃりと眉を下げる大和さんに、俺は濡れた手を拭いて近付いた。

「おっさん、あんた何も分かってねーよ」

「なっ!?」

 真っ正面から目を見て言い放った俺の言葉に大和さんは驚いたように声をあげたが、俺はそんな大和さんの様子をスルーして言葉を続ける。

「俺たちメンバーのことをあんたがどんだけ大事に思ってくれてんのかは、もう十分すぎるほど、例えおっさんが隠そうとしたって、俺もあいつらみんな知ってる」

 瞬間的に耳を赤く染めて何かを言い募ろうとした大和さんだったが、そんな照れ隠しの言葉なんか、今はいらない。

「でもな、大和さん。俺たちは、そんなあんたのことが、大事なんだよ。俺たちのことを何よりも優先して考えてくれるリーダーのことが、俺たちは大好きなんだ」

「…………」

「だから、たまには俺たちからの思いも、そんな照れずにさ、大和さんには受け取ってほしいんだ。」

「………………」

「明日、楽しみにしててくれよ!」

 気が付けば耳だけでなく顔まで真っ赤にして居心地悪そうに俺の顔を見つめていた大和さんは、俺がそう言って笑うと、ようやく観念したのか、小さく頷いて「……ハイ、タノシミニシテマス」なんて言うものだから。

 その子供のような、かわいい反応に思わずブハッと声がもれた。

 それに大和さんも微妙な……文句を言いたいけど言えない、口を開けば薮蛇になるのが分かっているかのような顔をするものだから。

「ほんと、俺らのリーダーはかわいいよな」

 気がついたら大和さんの頭を引き寄せ、俺は大和さんの頭をポンポント子供を落ち着けるように軽く叩いていた。

 これは、普段は見せない、甘え方を忘れた子供のような大和さんにだけ見せる特説サービス。

 これをすると、大和さんは最初のうちはむずがるような反応を返すけど。その内落ち着いてくるのか、大和さんは安心したようにほっと体の力を抜いてくれる。

 おれは、それが好きなんだ。


「……それで、明日は弁当。受け取ってくれるよな?」

「うん、ありがたく」

「よし、それでよし!」

 本当、俺たちのリーダーは仕方がないな。







 次の日のお昼。

 三月から貰ったお弁当につけられていた、一織と環からの「無理は禁物です」「ヤマさん、がんばって」のメッセージを愛しそう見つめるリーダーがいたとかなんとか。

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