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​白 銀 の 戦 慄

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執筆者の写真siversou

コーヒーに関連のメモ

[エスプレッソの基本]


[01.エスプレッソとは]

 今、日本で一番よく淹れられている珈琲が「エスプレッソ」である。

 確かに「エスプレッソ」単体では馴染み薄いかもしれない。

 しかし、「エスプレッソ」は「カフェラテ」や「カプチーノ」などを淹れる際にも用いられる必須材料でもあるので、日本では現在、「ドリップ珈琲」よりも「エスプレッソ」の方が多く淹れられていると思われる。

 ※日本ではこの「エスプレッソ」を飲む時、その「苦味」を楽しむものとして「砂糖」などの甘味料を入れない人も多いが、本場イタリアでは「砂糖」をスプーン3~5杯ほど入れて、甘くしてから飲む飲み方が一般的である。

 

 ここで疑問となるのは「エスプレッソとは何?」というとこである。

 「エスプレッソ」とは本来、イタリア語で「急行」「早い」という意味になる。

 英語で言うところの「エクスプレス」と同じ意味合いだ。



 余談であるが、コーヒーは昔、煮出して淹れていた。

 しかし、それではあまりに抽出の時間がかかり過ぎる。もっと早く淹れられないものか。

 そう考えた昔の人は、そこで「水圧」……要するに「圧力」を掛けて一気に珈琲豆から成分を抽出するのはどうかと考えた。

 それが1901年頃のイタリアでの話。

→→→→補足すると、インスタント珈琲もこの頃出来たらしい。

    なので珈琲の歴史は現在のところ約100年程になる。






<エスプレッソのメリット>

 ・早く淹れられる=お客様への提供時間が短くて済む。

  (抽出時間だけで言うと豆の種類や挽きの粗さにもよるが、大体20~30秒程)

 ・味が濃い=牛乳やチョコレートソースやココア、様々なフレーバーシロップなどの副材料を加えても、珈琲の味や風味がしっかりと出る。

  (故にアレンジ珈琲のベースとして多用され、人気が高い)











[02.美味しいエスプレッソを淹れる4Mとは]

~美味しいEspresspの4(クワトロ)M(エンッメ)~


1.Miscela(ミシェンッラ)→配合、ブレンド

 美味しい珈琲を淹れる為の所謂「レシピ」のこと。

 珈琲を淹れるために必須の材料と言えば「珈琲豆」である。

 しかし「珈琲豆」も植物、毎年生産環境を同一に保てる訳もなく、同じ味で同じ生産量が取れる事はまずない。

 ある一つの農園の豆を使い続けるのも拘りとしては良いのかもしれないが、そうすると味の差も毎年歴然となる。

 勿論、卸し価格だって毎年変動するかもしれない。

 そうすると、お客様に対して「常に同じ味のものを提供する」という均一性が保たれなくなる。


 「ブレンド珈琲」がどこの店にも置かれているのは、そう言った面を考慮し、5~10年を通してなるべく安定した味、値段のものを提供するためである。

 なぜ「ブレンド」すると珈琲の味にバラつきが出にくいのか。

 なぜ「ブレンド」だと安定した味になるのか。

 それは極端な話、5つの珈琲豆をブレンドした場合、それぞれの豆から抽出される成分は1/5だからである。

 その中の一つがある年、あまり出来が良くなかったとしても、1/5の抽出成分ならば他の豆で代替できる。

 一つの豆だけならば微々たる味の差も分かりやすくなる。

 だが「ブレンド」にするだけで全体の味のバランスが崩れにくい。

 豆それぞれにある長所を掛け合わせて「より良質な味」にすることができるのだ。

 また、「誰でも飲みやすいバランスのとれた味」を作ることも、「酸味が好き、苦味が好きと言った人用にオリジナルのレシピ」にすることも「ブレンド」ならば可能となる。



2.Macinato(マチナート)→グラインド

 珈琲豆を粉に「挽く」……「豆を細かく砕いて粉状」にすること。一言で「粉砕」。

 珈琲全てに言えることだが、「ドリップ」でも「エスプレッソ」でも豆の挽き立てが一番美味しい。

 珈琲豆の風味や成分がまだ濃厚な段階、新鮮な状態だからそれも当然である。

 珈琲豆は油分が多い種類である。また、揮発性であるので珈琲の実から分別した時点で、珈琲の旨味成分であるその油脂は徐々に気化・蒸発していくのだ。

 その為、店ではある一定量は挽き溜めて提供時間を短くすることはあれど、なるべくその量は少なく、少量ずつ注文が出るペースによってグラインド(挽いて)している。


 ここで注意しなければいけないのが、挽き目の荒らさ、粉状にした粒の大きさである。

 ただ豆を細かくすれば良いというものではない。

 その日の温度や湿度によって、挽いた後の粉の粒子は変動する。


 粒子が変動するとどうなるのか?

 珈琲豆は、実と豆を分けた(この段階の豆は薄緑色で「生豆(なままめ/きまめ)」と呼ばれ、その色から「グリーンコーヒー」とも呼ばれる)あと、幾つかある方法の中から一つを選択し乾燥させ、その後に「焙煎」…豆を煎る(火を入れる)必要がある。

 焙煎(ローストとも呼ばれる工程)には、味や香りを引き出す効果があり、生豆は焙煎によって水分が除かれ、豆の持っている悪い成分、悪い味をうまく処理して消し、豆本来の香味(酸味や苦味などの個性)を出すという目的がある。

 その為に豆の外側から芯までムラなく均一に煎ることや、その豆に適した煎り加減が大切になってくる。

 だからこそ、熟練の職人の経験則、感が物を言う焙煎屋という職業が存在するのだ。その煎り加減の微妙な違いによって風味にも差が出る。


 で、だ。豆は焙煎することによってある程度水分が飛ばされ、イメージとしては「炭」にも近いほどになる。

 そこで考えてもみてほしい。日本でも「炭」は冷蔵庫などに入れられ、「湿気・防臭対策」としても利用されている。

 珈琲豆もそれと同じなのだ。粒が小さければその分粒の表面積が小さくなるが、粒自体は小さいので吸収効果も高くなる。

 湿気が多い日に挽きを荒くし粒を小さくすると、その分鮮度も早く落ちる。

 気温が高い日もまた同様。気温が高いと豆の油分が気化するもの早く、鮮度がガクンと落ちやすくなるのだ。

 専門店やバリスタなどの職人は、その為日によって豆の挽き目を調整している。

 (全ての店がそうとは言えないが)

 だからこそ「グラインド」が美味しい「エスプレッソ」を淹れる為の2つ目のポイントになるのだ。

 


3.Machina(マシン)→機械

 抽出の際に水圧を掛けるということは、その為の専門的な機械(マシン)が必要となってくる。

 「エスプレッソ」より美味しく淹れる為には、その機械の事をきちんと知ってあげる事が大切だ。

 機械にも個性があり、違うメーカーでは当然淹れ方が変わってくる。

 また、同じ種類のものでも個性というものがあり、味に僅かな差が出たりする。

 適当にやろうとするのは御法度だ。



4.Mano(マーノ)→腕(技術)

 美味しい豆があって、しっかりメンテナンスされた機械があっても、ちゃんとした抽出技術を持った人がいなければ当然、美味しいエスプレッソは淹れられない。

 素人とプロが同じ条件下で同じことをやって同じ結果が出せないのと同じだ。

 それに、美味しい豆を作るのにも人の手が必要だ。

 その豆を流通、運搬するのも人の手。

 届けられた豆を管理するのも人の手。

 抽出に使う機械をメンテナンスするのも人の手。

 そのどれか一つが欠けても、美味しい「エスプレッソ」は出来ない。



[03.エスプレッソの5つのポイント、抽出条件]

~エスプレッソ5つのポイント~

01.クレマ=泡

 「エスプレッソ」は普通の珈琲と違って抽出後の色が「黒色」ではなく「茶色」で、水面にも茶色の泡が乗るのが特徴。

 この水面に浮かぶ「茶色い泡」の事を「クレマ」と呼ぶ。

 そもそも「クレマ」は何故できるのか。

 珈琲豆に含まれる炭酸ガスが抽出の際に水圧で押し出され、エスプレッソの表面に浮かぶ泡、クレマに変わる。

 この炭酸ガスは珈琲豆の鮮度が良ければ良いほど含有量も多く、エスプレッソの表面にこの「クレマ」がどの程度乗っているかで豆の鮮度もある程度は把握出来る。

 「エスプレッソ」を淹れる際にはちゃんとこの「クレマ」が乗っているかどうかが大事なポイントの一つ。


 また、「クレマ」の色でも「エスプレッソ」の良し悪しが分かる。

 色と言っても安易に「茶色」と判断するのではなく、その微妙な差を見て判断することが大切だ。

 アメリカでは「ヘーゼルナッツの殻のような色」が良いクレマの色と言われている。

 日本では「どんぐりの皮の色」と言えるかもしれない。

 が、これも全てが一律の色ではないのでやはり自分で見て覚えていくしかないだろう。

 分かりやすく言うと「赤っぽい茶色」が良いクレマの色らしい。



02.アロマ=(飲む前に鼻から嗅いで感じる)香り

 抽出した珈琲に鼻を近づけて嗅いだ匂いが「アロマ(香り)」。

 これも豆の鮮度やレシピ(豆の配合)によって差が出てくるが、鼻を近づけた時に香りがしっかり広がるかどうかが大事。

 香りが広がらないということは何かしら原因があるという事なので、その原因をあぶり出してきちんと美味しい珈琲を淹れられるように、日頃からの管理、確認を怠ってはならない。

 補足だが、前述でも記した通り珈琲の旨味成分や風味は全て揮発性なので空気に触れると気化してしまう。

 なので開店前などではその日の「レシピ」を見る際、試し淹れした珈琲は直ぐに鼻を近づけて香りの強さを確かめる必要がある。



03.ボディ感=飲んだ後、舌に乗せた際に感じる液体のとろみ感

 サラサラだとあまり良い「エスプレッソ」とは言えない。

 質量、とろみ感(ボディ)がしっかりしているかどうかを判断する必要がある。

 このボディ感が薄いと、そこから副材料を入れて作るドリンクだと珈琲の風味が負けて薄っぺらくなってしまう。

 例えるならばそう、「カフェラテ」や「カプチーノ」などの例が分かりやすい。

 この二つは高温スチーム(水蒸気)で泡立てた牛乳(ミルク)の液量やフォーム(ミルクの泡)量差で「カフェラテ」と「カプチーノ」に分けられるのだが、どちらを淹れるにしても「エスプレッソ」と「ミルク」は必須になる。

 そして、ミルク(牛乳)は高温スチームで泡立てるので、液温が上がったミルクには粘性が出てくる。

 それに対して「エスプレッソ」のボディ感が薄っぺらいと、サラサラと安っぽい「カフェラテ」や「カプチーノ」が出来上がってしまうのだ。


 では、このボディ感は何故生まれてくるのか。

 実は珈琲豆の16%は油で出来ているとされている。

 この珈琲豆の油と、抽出する際のお湯がしっかり乳化(一体化)されていれば、このボディ感(とろみ)は出てくるのだが、逆にいうと「ボディ感が出ていない=水と油が乳化していない」という証拠にもなってしまうので、そう言ったエスプレッソはあまり「宜しい」エスプレッソとは呼べなくなる。



04.フレーバー=(飲んだ時に鼻から抜ける)香り

 珈琲にはその種類にもよるが、様々な香りが含まれている。

 「ナッツっぽい香り」「チョコレートみたいな香り」「柑橘系の香り」「スパイスっぽい香り」「バニラのような香り」など。

 上げれば本当に沢山の香りがあり、人によってもその感じ方には個人差があるのだが、そんな様々な香りがちゃんとそのカップ(一杯)から感じられるかどうかが4つ目のポイントになる。



05.アフターテイスト=後味の余韻

 04.に出てきたフレーバーの「持続性」があるかどうかが「アフターテイスト」。

 日本では「エスプレッソ」を飲んだ後に水を飲んで口直しをする人もいるが、アメリカでは逆に水を飲んでから「エスプレッソ」を飲み、この余韻を楽しむほどである。

 口直しに日本人が水を飲むのは「エスプレッソ」を飲んだ際に喉がイガイガする為かもしれないが、そう言った「エスプレッソ」はあまり品質が良いと言えないので、決して「水を飲むな」というワケではない。

 また、前述にも言った通り元々「エスプレッソ」は甘味料を多量に入れて本場などで親しまれてきたので、日本人が「エスプレッソ」を飲んだ後に水で口直しするのも砂糖などを加えずに直で「エスプレッソ」を飲むためかもしれない。

 日本が間違った飲み方というワケではなく、それこそ歴史が築いてきた文化による差がこういったところに出ているのだろう。






~抽出条件~

〔粉量〕ーーーー「一杯取り」で7~9g

 学校などでは豆の種類や挽き方で変える事もあるが8gで淹れることが多い。

 大体は「二杯取り」にするので一回の抽出で淹れるレシピは「16g」という事になる。

 「一杯取り」=一回の抽出でカップ一杯分を淹れること。

 「二杯取り」=一回の抽出でカップ二杯分を淹れること。


〔抽出圧〕ーーー9気圧

 ※一般家庭の蛇口を捻った時に出てくる水圧が1.5気圧らしい。

  アレの6倍ほどの水圧と思ってもらえれば良い。


〔抽出時間〕ーー20~30秒

 「抽出時間」=珈琲の粉がお湯に触れている時間。

 抽出時間が「ドリップ」だと少なくても一分以上は掛かるので、「急行」→「エスプレッソ」。


〔抽出量〕ーーー20~30ml

 「抽出量」=淹れられたエスプレッソの量、カップ一杯分の液量。


〔抽出温度〕ーー90度以上

 「抽出温度」=珈琲の粉に触れる湯の温度。

 これが高すぎても粉が火傷して美味しいエスプレッソは淹れられないが、安定した味のエスプレッソを淹れるには少なくとも「90度以上」が好ましい。



[04.マシンの名称]

~エスプレッソを淹れる時に使用する機械(マシン)~


○珈琲グラインダー(豆を粉にする、豆を挽く)

 豆を入れ、挽き目の荒さを調整し、電源(メインスイッチなどはなく、コンセントを差したら「タイマースイッチ式」で挽き時間を調整できるレバーを引いて即座に利用出来る)を入れ、豆をその都度挽いていく機械。

 ※豆を挽く機械のことは「ミル」「グラインダー」と呼ばれ、手動と電動に分けられる。

  今回は【ドーサー付きタイプ】について簡単に明記していく。


 ・ホッパー……珈琲豆を溜めておく場所。

 ※挽き目の荒さは上記と下記の間にある、排出口のサイズを変える事で変更可能。

  その為にホッパーの右下部分には挽き目の荒さを調整するためのレバーが付いている。

 ・コーヒー・アウトレット・ガード……ホッパーの排出口と刃部分を遮断するガード(板)。

 ・カッター……上から落ちてきた豆をカッターで粉砕し、下へと流していく。

 ※ここで粉砕された珈琲パウダーは、排出口から下記の部位へと圧力で押し出されていく。

  補足だが、豆を粉砕する部分は大別して四種類ある。

 「ブレードグラインダー」「ロールグラインダー」「コニカルカッター」「フラットカッター」

  今回使用しているのは「ブレード(刃)グラインダー」である。

 ・ドーサー……挽いた豆、粉状(パウダー状)になったものを一時的に溜めて置く場所。

 ・ドーサーレバー……ドーサーの横にはレバーが付いている。このレバーを一回引く事でカップ一杯分の粉を出すことが出来る。



○エスプレッソマシン(エスプレッソを抽出する)


 <抽出>

 ・抽出ボタン(カスタマイズ可能ボタン)……事前に細かい設定(何mlの水を出すか、好きに設定/カスタマイズ)をしておき、抽出する際にここを押して水(熱湯)を出す。

 ・抽出ボタン(マニュアルボタン)……押した後はもう一度ボタンを押すまでずっと水が出っぱなし、圧力が掛けられっぱなしになるボタン。

 ・ホルダー/ポルトフィルダー……珈琲パウダーを入れ、詰めるアイテム(持ち手有り)。片手で持てるが見た目以上に重かったりする。

 ※別途「タンパー」なる道具を用い、上記のアイテムに入れた珈琲パウダーを均一な圧力を掛け、パウダーを固める(詰める)必要がある。

  これは機械ではなく手動になるので練習して経験を積むしかない。


 <スチーム>

 ・スチームレバー……スチームを出したり止めたりする為のレバー。

 ・スチームノズル……「ピッチャー」と呼ばれる容器に淹れられたミルクにスチーム(高温水蒸気)を当てるため、細長くなっている。物によっては水蒸気が出る部分が少し膨らんでいるものもある。

 ※1気圧/100~110度前後の水蒸気が出る。火傷注意。


 <別途機能(エスプレッソマシンによってボタンが付いていない物もある)>

 「カップ保温ボタン」……マシンの上部にはカップを置いておく場所がある。そこで、マシンの熱を使ってカップを保温するためのボタン。

 「熱湯排出ボタン」……紅茶などを淹れる為に用いる、エスプレッソ抽出ボタンとは別口の熱湯排出ボタン。

 「フォーム(泡)作成ボタン」……スチームノズル同様こちらも水蒸気を出すのだが、スチームノズルと比べるとその出力は弱いのできめ細かい泡は作れない。


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[chapter:05.抽出方法]

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