連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【四龍を統べし者】計八話
あらすじ
赤・青・紫・黒の四体の龍の力をその身に宿す人。 それら全てを統べるのは銀色の体を持つ龍。 かつて天より舞い降りたこの銀色の龍は、人を愛し慈しんだ。 だが、人には恩を仇で返され、今、打ち滅ぼされんとしたその時、天より、銀とは違うそれぞれ四体の龍が姿を現した。 この龍達は銀龍の事を深く愛し、助けたいと願う。 だが、銀龍はこれを断り、龍達はせめてとその銀色に四人の忠実な部下を与える。 今、銀龍を主にこれら四人の戦いが始まる――――――――
(【暁のヨナ】パロ)
銀魂 龍 坂田銀時 神楽 新八 桂小太郎 高杉晋助 土方十四郎 沖田総悟 神威
周りは敵に刻一刻と囲まれているのが分かる。
足音は次第に小さくなっていき、それこそが包囲網が狭まっている証拠。
「どうしましょう・・・もう逃げ場が・・・・・・・・・」
ポタリ――――――――――-----
音もなく、雫くがこの無駄に空虚な光を放つ城に流れ落ちた。
「新八、お前はもうこの場から去れ」
「な、何を言うんですか白龍王!?」
「このままじゃオメェまで道連れになっちまう」
「しかし」
「・・・・・・・・今まであんがとな」
白龍王は、まだ何かを言おうとしていた新八を手で制し、一つ、胸の前で印を結んだ。
ボフンッ
音と共に、つい先程まで人がいた筈の場所には、小さな紙切れが空(くう)を舞う。
-------式神-------
その“人”は式神を使い、これまでを過してきた。
月がその人を照らす。
その瞳は血のように赤く、溶岩のように煮え滾っていた。
今まで自分の式として、従順に尽くして生きてくれた新八に、これ以上迷惑をかけるわけには行かない。
《白龍王》とその式に呼ばれていた者は、その鋭く煌めいた眼差しを閉じ、今、砂塵さじんを舞い上げ城の中を謳歌するその寒風を身に感じる。
天界にいた頃は毎日のように心地よくその身に浴びていた風。
今ではその風が、かつて龍神であった自分を嘲笑うかの如くその身を撫でて行く。
バタバタ バタバタッ
耳を澄まさずとも耳に聞こえる。
これは今、自分を追い詰めようとする人の足音。
ガチャガチャ チャリン
鉄の鎧いが擦れ音を立てているのが、壁を後ろにする背から伝わる。
時折、その中には鉄により創造された武器が擦れる音が紛れた。
それらは全て、白龍王自身が知識を与え人間に育んだ学び。
それを忘れてしまったのか、今や人間は自分の敵となってしまっている。
黒く塗りつぶされたこの夜空浮かぶあの朧げな月でさえ、今では自身を嘲笑っているのではないのかと疑問に感じてしまう。
フゥ―――――――----
肺に溜まる不純物を吐き出し、息を詰める。
そろそろ逃げるのは止めよう。
昔から愛し慈しんでいた存在なんだ。
そんな人間たちを周りにこの命終えられるなら、それは幸せな生涯だったのかもしれない。
まぁ、龍として生きた方が何億倍も長いが・・・・・・・
覚悟は決めた。
もう逃げ回るような事はしねぇ。
最後は如何様な形であろうと、この人の身で命終えよう。
龍は一人、己の城と共に、愛し止やまない人の身で滅び行こうと誓わん――――----
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