連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【無からの始まり】一話
野畑が広がるその景色
そこには
小さな白い影と、大きな黒い影が、二つ並んであった。
松陽は今、自分の隣を何も言う事無く歩いている小さな幼子を見下ろす。
まだ、年端もいってはいないだろう。
先ほどまで、この仔は普通の子ならばいる筈の無い場所にいた。
それはとても悲しい事。
それを解っているのか、解っていないのか。
幼子は何も言わず、口を開こうともしないまま、自分の差し出した手を掴んでここまで付いて来た。
その姿は、血に濡れていながらも、何処か純白の色を思わす。
これはこの仔の色の為か、それとも、悪意の一つも持たない瞳の奥、心と言う物の色なのか。
そんな仔を、鬼などと恐れ戦おののき恐怖した者達の事を思うと、
自分の事ではないのにもかかわらず、胸が苦しくなってきてしまう。
松陽は隣にいる幼子の境遇を思い、幼子と繋がってはいない手のひらを自分の胸に当てた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
いつの間にその歩みが止まっていたのか、幼子は松陽の顔を深紅の瞳で見上げていた。
松陽はこの仔に図らずとも心配をかけてしまった事実をしり、慌てて悲しそうな表情緩める。
それを見て、幼子もどう思ったのか、先ほどと同じように前方に顔を向けた。
こんなにも、人の感情に敏感な仔が
今まで鬼として罵られてきた。
どれだけ傷ついたのか
いや、それとも傷つくという事すらも、今のこの仔にはありえないことなのか。
一歩、また一歩と
再び歩みを進め、幼いその手を引く
その手を引かれ、その幼子は
今は何一つ持たぬ仔は
一体何を思うか
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