連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【無からの始まり】七話
た、食べた。
パクッとその小さな口を精一杯あけて
もぐもぐと愛らしいその顔の表情を崩さず、口の中で饅頭をしっかりと噛締めゴクリ…という音と共にその噛締め味わった饅頭を喉の奥へと送り込む。
可愛らしい仕草で、あの可愛らしい銀時が・・・・・・・・・
《食べたーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!》
耳を劈くような雄叫びが、教室の中に木霊す。
その雄叫びは、この教室の中にいた者の殆どが上げたものであり、その声量に銀時は肩をびくりとさせて驚いた。
そんなとんでも雄叫びの余韻がこの教室に薄れた頃には、この教室の中にいた殆どの異常者達………もとい塾生達が眼をギラギラかキラキラかと輝かせ、それに対し銀時はその赤い瞳をパチパチと瞬かす。
まさに対比の光景。
ある意味美しいとも言えよう。
銀時の一挙一動に、彼等のこうふ・・・・・・・テンションはうなぎ上り。
だが、当の銀時自身は勿論その事に気付かない。
いきなり襲ってきた嵐が過ぎ去った事に安心したのか、銀時は先程の雄叫びからしばらく経って、その足をフラフラと進めた。
スッ
ドキ
スッ
ドキドキ
ススッ
ドキッ
銀時がその足を踏み出すたび、彼等の鼓動は高まる。
次なる銀時の目的。
その人物とは・・・・・・・・・・・・・
「え・・・・・・・・?」
予想にもしていなかった為に、今、自分の置かれてしまった状況に間抜けな声と共に疑問符を浮べてしまう晋助。
ジーーーーーー
痛い・・・・
とてつもなく痛い。
周りからの視線も痛ければ、刺すように輝く純粋なその視線もかなり痛い。
「な、なんだよ・・・・」
緊張からか、自分の発してしまった無様にも震えてしまった声に、晋助は頬を赤く染める。
しかし、声をかけた相手からの返事はない。
注がれる視線。
その先は、晋助の懐に固定されたまま動く気配がない。
「ぎ、ぎん・・・・・とき?」
そう、皆様の予想通りその視線の正体は、我等が心のアイドル―銀時―
晋助は自分に注がれる視線に若干おどおどしながら声をかける。
が、言わずもがな。
返事は返ったこず。
晋助はそれを改めて確認し、おそるおそる己の足を横に突き出し、その場から離れてみる。
ジーーーーーー
横に晋助が移動すれば、銀時の視線もその後に続く。
「・・・・・・・・・」
ソローーーーー
ジーーーーーー
また晋助が横に移動してみれば、銀時の視線もまた、それに付いてまわる。
「な、なんなんだよいった・・・・・・・・」
なんなんだよ一体・・・・・・・・・?
そう言いかけて、晋助の言葉は途切れる。
ハッと何かに気が付いた素振りを見せ、先程から銀時の視線が突き刺さるその先、自分の懐へと腕を掻かき入れる晋助。
ゴソゴソと音を立て、晋助は懐ふところから本当に小さな風呂敷包みを取り出す。
「こ、これか?」
その風呂敷包みを銀時に差し出すように晋助は前に出す。
コクッ
初めて晋助が投げかけた問いに、銀時が返事を、返した。
一体、この続きはどうなるのか・・・・・・・・・・
Comentários