連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【無からの始まり】
あたり一面
地面に横たわる無数のものに埋め尽くされる
それらからは
鼻を塞ぎたくなるほどの異臭が生まれ
その上には
それらを啄ばみ貪る生き物がいた
この場を色に例えるならば
赤と黒
そして、その中に一人佇む幼子
白
そして
赤
白い髪を血に濡らし
風吹きすさむこの大地に
たった一人でこの幼子は
ただ無駄に流れていく時の中を
ただ一人虚しく生きていた
そんな何一つ変わることの無い無駄な時間に
一石を投じる者あり
「おや、ここには《屍を喰らう鬼》がいると聞いて来たのですが……どうやらそんなもの、この世には存在していなかったようですね」
「……?」
「どうですか? 私と一緒に……」
優しく伸ばされた手を
殺意のこもらない手を
恐る恐る掴む幼子
全てはこの時から始まった
何も持っていなかった一人の者
ここから始まる全て
少しずつ 少しずつ
これから与えられる現実が
これからを
作り出していく……
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