連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【逆行の記憶】三話
周りの音が急に聞こえなくなったかのような錯覚が起こるほどその一言に驚いてしまった。
……俺を、殺りに来たのか?
(コイツは何を言ってるんだ……)
しばらくの間、ヤローとの俺達との間に言い知れぬ緊張感の糸が張り巡らされていた。
以外にも、その沈黙を破ったのは総悟だった。
「旦那、変な冗談は止めてくださいよ。俺は土方さんならいつでも殺る準備はできてますけど旦那を殺る気なんてさらさらありませんぜ?」
さっきまでの言葉が聞き間違えであったかのように普段どおりの反応で対応する総悟。
ヤローはその言葉を聞き一瞬何かを考えていたかと思うと、直ぐに違和感を覚えた様な反応を示す。
俺達を見てから自分の手を見て驚いている。
(何してんだ?)
俺と総悟はヤローの変な行動を不思議に思いお互い顔を見合わせる。
総悟は小首をかしげヤローは何がしたいのか図はかりかねていると言った感じだ。
ほんの数十秒自分の手を見ていたヤローがこちらに顔を向けた。
そして頭をかきながら一つだけ可笑しな質問をする。
「あんたら、俺のこと知ってんの?」
…………思わず瞬きをしてしまった。
俺の少し後ろにいる総悟を見てみれば、目を白黒させて驚いていると言った感じだ。
(え、何? これドッキリなのか? ドッキリなんだよな? いや、でも……ないないない! そんな事絶対無いって だって本編の方でもそのネタもうやってたじゃねぇーか。……そうだよ、そうだよな。そんな事絶対無いっ! だってもう過ぎ去った何年前かのネタだ。万事屋は俺達の事をからかってるんだ、うん、そうに決まってる)
俺は混乱しかけていた頭をフル回転させある答えに行着いた。
ゆっくりと己の懐に手をいれタバコを取り出す。
俺の愛用Myライターマヨでその取り出したタバコに火をつけ心を落ち着かせた。
そして心の落ち着きと共に白い煙を肺から外へと吐き出す。
「てめぇーふざけてんのも大概たいがいにしやがれ。どうせそうやって俺達を貶おとしめるつもりなんだろ? 諦めろ。今回の事は感謝するがだからと言ってお前に脅迫される筋合いはねぇーよ」
静かに奴の目を見て言った。だがふと思う。
(ん? 目が……死んでない?)
その事実に驚きヤローの顔を凝視してしまった。
ヤローは俺の視線に気づきさらに一言付け加える。
「何人の事じろじろ見てんの?そんなに銀髪が気にくわねぇーのか?」
普段のアイツなら必ず天パの方を気にかけて言ってくるはずだ。
だが違った・・・
ヤローはえらく反発的な態度とは相反し、その普段とは違う瞳には悲しみの色が深く刻み込まれていた……
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