連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【逆行の記憶】五話
(……ハァァァァァァァァァァァア!? 今こいつなんて言った? やっぱこれマジなのか?)
不覚にも思わず頭の中で叫んでしまった。
いつもなら「ふざけるなっ!」と刀を抜いている所だが、奴の顔はいたって真面目そのもの。
これはもうほぼ確定で間違いないのだが、最後の悪あがきといった所で一応確認を取ってみた。
「え、っと……お前、自分の名前わかるか?」
俺は最後の希望をこの質問に託したが、その希望はあっけなく散ってしまった。
「お前等馬鹿? あいつらに捨てられ名前すら覚えてねぇ筈のこの俺にそんな事聞くか普通」
(ん? あいつ等? あれ、確か記憶喪失ってのは記憶を失うもんで……)
俺が一人考え込んでいたのを一人楽しげに見ていた総悟だが、銀時のこの様子にさすがに何かを感じたのだろう、俺の方を馬鹿でも見るような目で見ていた奴に一つ確認を取る。
「旦那、自分の歳……わかりやすか?」
銀時はそれを聞きますます俺たちを馬鹿でも見るような顔になった。
そして、総悟の質問に答えようとしないでその場を立ち去ろうとする。
「お、おいちょっと待て!」
この場を立ち去ろうとするヤローの肩を掴み引き止める。
ヤローは肩を掴んだ俺の方にゆっくり顔だけ向け殺気を飛ばした。
「俺を殺しに来たんじゃなかったのかよ? お前等から殺気は感じられないから大人しくしてやってんのに変な質問ばっかしやがって……殺すきねぇなら俺の身体早く元に戻せよ。そんで、あいつ等に言っとけ、てめぇーで生んだのに殺そうとすんなクソババァってな……」
その目は深い憎しみの炎をたぎらせている様に感じた。
(ん? ……ちょっと待て、身体を元に戻す? こいつ、何言ってやが……)
その本人の言葉によりすぐに解消される。
「もういいから身体だけ直せよ。大人の身体なんて違和感ありすぎて気持ち悪いんだよ……」
頭をかきながら言う姿は何時ものアイツ、だが、今言った大人の身体って……
その結論に辿り着けば、今まで奴が取った行動の殆どに納得がいった。
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