連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【逆行の記憶】七話
頷きあった二人は静かにこちらを向き、信じがたい事を言った。
「お前は今、記憶喪失になってるようだ」
その言葉を聞いたときの俺の反応はこうだ。
(何? 記憶喪失って何? てか記憶?過去を忘れるとかか? 俺ちゃんとかこのこと覚えてるぞ? 何訳のわからない事を……こんな嘘を言って俺を油断させようと言う作戦かなんかか?)
いきなり訳の分からない事を言われた上に、前にいる連中は全くの他人。
知り合いですらないのでそんな失礼気回りない事を思った。
その表情は目の前にいる連中を馬鹿にするような目付きだったのではないかと思う。
すぐにその目には警戒の色が浮かぶ。
そりゃ当然の反応だと思う。
今まで散々命を狙われてきた。
それこそあんな手こんな手で……
その為今回のこれも何かの作戦か何かだと思ったのだ。
俺たちは信じられないが、今目の前にいるヤローは五~七歳以降の記憶がなくなってしまったらしい。
総悟と俺は顔を見合わせ目で合図をした。
ヤローにこの事を言って見れば案の定…… 俺たちを馬鹿でも見るような目で見てきた。
だが、その後すぐに警戒しているような色をその紅あかい瞳に浮かべる。
俺と総悟はそれに驚いたが、すぐに誤解を解こうとした。
そう、俺達がただ馬鹿を言っているという誤解を……
「信じられねぇ様だが本当だ・・・現に俺たちは記憶を失う前のお前を知っている」
そう言ってしばらくして、奴は少しだが警戒を薄めた。
「記憶を失う前の俺?それは今の本当の『俺』と言う意味か・・・?」
「そうだ」
「今の俺は本当に大人だったと……?」
「あぁ」
そこまでは俺を疑うような眼差まなざしで見ていたヤローだったが、二番目の質問の答えを聞き終えたところで、最後の薄い警戒をといた。
俺は色々と今までにあった為、人の考えている事とかを悟るのが当然のようになっていた。
だから相手が嘘をついていればすぐに解る。
目の前の奴の《眼》は嘘をついている時の目ではない。
俺はそれを感じ、最後に残していた警戒をといた……
Comments