連載していたけれどもサイト移転際に移動させなかったシリーズ
【逆行の記憶】十話
ゴリラみたいな顔の男に見つめられ、銀時はその真剣な眼に一瞬だけたじろいだ。
が、相手は本当に自分の過去がどのようなものなのか興味があるようで、中々その視線をはずしてはくれない。
他の連中も自分の顔を食い入るように見てくる。
まるで尋問にでもあっているかの気分だ……
「ハァァァァァァァァ~」
コキコキッ
大きな溜息をついて首を回す銀時。
「話しても良いが、俺を凝視してくるのやめてくれねぇか? へんに緊張して肩こるんだけど……」
その言葉を聞き気付いたのか、その部屋にいた者は皆銀時から視線をはずした。
もちろん意識だけは銀時に向いている。
そうしなければこれから銀時が話してくれる内容を理解する事が出来ないからだ。
自分からあの痛いまでに降りかかっていた視線がなくなったのに方を下ろした銀時は、軽く息を吐きながら改めて腰を降ろす。
実は先ほど総悟に投げ飛ばされそうになり、それを避けたままの体制で話していたのだ。
なので肩がこっていたのはその可能性もなくはない。
だがこの場にいる全員は、今は銀時の過去の事の方がよっぽど気になっているのか、先ほどの銀時の言葉には一切のツッコミを入れず、銀時の次の言葉を待っている。
「俺は今まで戦場でそこら辺に転がっていた屍から、食糧やら何やら生きていくのに必要なものを剥ぎ取って生きてきた……その所為かわかんねぇけど……俺は『屍を喰らう鬼』と呼ばれてた」
本当に簡単に説明が終わった。
そこまで聞き終えた近藤は何でまたそんな小さい頃から……と疑問に思い、その考えを顔全体に出してしまった。
「何で俺が戦場にいたか気になるって面ツラだな……」
銀時はその表情の意味を性格に読み取り、言葉にして近藤に軽く聞き返すように納得した。
「俺が戦場にいた理由は簡単だぜ? 俺のこの姿を見て今の時代じゃなんとも思わねぇかもしんねぇけど、俺がいた時代じゃぁこの銀色の頭にこの眼の色は酷くうす気味悪がられたし怖がられた……俺の、認めたくもねぇ俺の両親……そいつらにとっても俺は邪魔者だったんあだろうな……」
軽く口角を上げながら、今自分で話している人間のした事をあざけるような言い方をする銀時。
「四歳になったある日、あいつ等は俺を殺そうとした……だから俺はその家を飛び出して逃げたんだよっ!!
でも、村を出てもあのクソヤロウどもにとっては、俺が生きているのだけで目触りだったらしい……
何度も何度も金で人を雇っては俺を殺そうとしてきたんだ。
もちろん当たり前だけど最初こそ逃げ回るだけで精一杯だった。
けどな……俺がいつも生きながらえるためにいた場所は戦場……
辺りには刀なんかが当然転がってた。
俺はその刀を逃げ回りながら屍から剥ぎ取って襲ってきた刺客を返り討ちにした。
それから来たやつ等はみんな殺してきた。
で、俺の最後の記憶はいつものように屍のいる戦場にいたところで途切れてる……」
銀時は軽く閉じていた瞳を開いた。
この場にいる銀時以外の心の中は、今の銀時の話を聞いてその頭の中は、一体何を思ったのだろうか……
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