「分からないくせに……家族と友を殺された気持ち、分かんないくせに! 勝手なことを言うな! お前たち侍が殺したんだ! 人を人とも思わぬお前たちが! 消えてしまえ……消えてしまえ!! この鬼! 悪魔! 外道!」
空気が、変わった。
銀時の纏う空気が一変し、刺すように痛い、凍てついたものへと豹変する。
あたりを取り囲んでいた男たちは、瞬時にその異変に気がついた。
だが、それはこの不気味な程酷く鋭い空気のせいではない。
「グハッ!」
「うっ!」
「ゴハッ!」
次々に倒れていく仲間たち。逃げることはできない。何故なら、逃げようと思ったときには既に、自分たちもその場に倒れ伏していたのだから。
恨み言を叫び続けていた少女は、この事態に何が起こったのか理解できなかった。
「……えっ?」
自分の胸元から、大量の血が吹き出している。
いつのまに、なぜ、誰に。
痛みよりも戸惑いが勝り、胸元からそろりと顔を上げようとした少女の体は、そのまま後ろへと仰け反った。
ドサッ
気が付けばあたりは血の海。
その場に残ったのは、大地に沈む死体と、血濡れになった銀時。そして、驚きに目を見開き固まる、真選組の面々。
それは僅か五秒足らずの出来事。
真選組のメンバーでさえ、土方や沖田でさえ、目視できないほどの早業だった。
「なっ……」
漏れ出た声はそれだけ。
驚愕を表す声だけが口から漏れ、後の声は喉に詰まってどうしても出てこなかった。
暫し、周囲に沈黙が落ちる。
真選組の面々は警戒した、さっきまでは味方として認識していた人物を……坂田銀時を。
やってしまった。
少女の言葉で頭に過去の記憶が蘇り、直後に振りかざされた言葉の刃。
過去の記憶と『鬼』という言葉が引き金となり、銀時はやらかしてしまった。
表に出すつもりなんてなかったのに、アイツが、顔を覗かせてしまった。
後悔してももう遅い。分かっている。分かっているからこそ、後悔が体を重くした。
だが、いつまでも固まっているわけにはいかない。
先程から感じている、刺々しい視線。
彼らの視線が、疑心と警戒を孕んだものへと変わってしまっているのだから。
豹変した俺に驚き、中には怯え、恐怖し、恐れている気配すら感じる。
これまで築いてきた信頼に、ヒビが入った気がする。
ここまでがノートに書いてあった。
確かこれは、二重人格な銀時様の話を想像した時のだったかな。
ぶっちゃけワシもこれの続きが読みたい。誰か書いてくれまいか。
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