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​白 銀 の 戦 慄

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  • 執筆者の写真siversou

[銀魂]パラレルな松陽父、息子銀時

更新日:2022年9月29日





 俺と父さんとは血縁関係にある訳じゃない。

 けど、生まれて一年経った頃だろうか、話に聞いた限りじゃたぶん、そういう事になる。


 俺の両親は隔世遺伝かなんかで、銀髪に近い白髪に生まれた俺を秋とも冬とも付かない日に捨てた。

 公園でダンボールにかなり厚めの毛布二枚、それに湯たんぽとちょっと冷めてしまったミルクの入った哺乳瓶三本。

 その中にうずくまる様にして呑気にも寝こけていた俺を、父さんは拾ったんだと言ってた。


 話に聞く限り、少なくとも俺の事を嫌って捨てたわけではないのだろう実の両親の対応に、俺がその事実を知った時は些か微妙な気持ちになった。なら、なんで俺は捨てられたのか。

 気になって父さんに聞いてみたある日のこと。黙って目の前に白い封筒を差し出された。


 話の流れからなんとなくその封筒が誰から誰宛に送られたのかを察した俺は、父さんの手からそれを受け取った。

 テープや糊代等といった物には止められていなかったのだろう。

 指を掛ければ簡単に開くことの出来た封筒の口に、俺は父さんを見て、一つ頷きを返された。











――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 銀時へ



 私達にはどうやら、あなたを最後まで育ててあげられるような時間がないようです。

 本当にごめんね銀時……

 かと言って、国の支援する施設にあなたを預けるのも私達はとても不安に思います。

 聞けば近頃、そう言った施設で子供を虐待する大人達が増えていると……

 そんな中に私達の大切な息子を預けてしまうなんて、私達にはとても出来そうにありません。随分勝手な言い分だけど、あなたにとっての最善な未来を思い、私達は今日、あなたをある公園に捨てる事にしました。

 きっと大丈夫。あなたは幸せな人生を送れるはずだから。

 つい最近聞いたんだけど、その公園では捨てられている動物を見ると、つい面倒を見てしまう心優しい女の人がいるようだから。

 髪の長い、可愛らし顔立ちの人だって、噂ではそう聞いた。

 だから、あなたはきっとその人に拾われているはず。



 本当に、本当にごめんね。

 あなたの面倒を、最後まで見ることが出来なくて。

 恨むなら、他人の為に腕を振るってしまう馬鹿な男と、まだ治療法が見つけられていない病気に掛かる、馬鹿な女を恨んで。

 でも、それ以外の人を恨むようになっちゃ駄目だからね。

 いつでも人のために、何かできる人に銀時は育って。




 ............10/10、あなたの生まれた日に、この手紙を送りたいと思います。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――











 封筒の中に入っていたのは、そんな内容の折りたたまれた手紙一枚と、その間に挟むようにして入れられていた写真が一枚。そのどちらともに、何かに濡れて乾いた跡が確認出来た。

 俺は写真の中に写りこんでいた男女の二人を見て、気がつけば静かに涙を流していた。

 男の方は絶対にその筋の者だと思わせるだけの威厳があり、女の方は瞳が不自然に赤い、それでも綺麗な顔立ちをしていた。


 そうか、この二人が俺の本当の親だったのか。

 別に、悲しいとも嬉しいとも思っていた訳でもないのに、次から次へと流れてくる涙を、俺はその時止めることが出来なかった。


 当時、俺はまだ小学校にも上がっていない位の歳で、正面で父さんが漢字を訳してくれないと、両親の書いてくれた手紙が読めないような馬鹿だった。






 …………とまぁ、俺の身の上話は取り敢えずこの辺りにしといて。

 話が急に変わって悪いんだが、今日は俺の父さんが超ド級の味音痴だと言うことを皆には知ってもらいたい。

 いや、俺も知ったのはつい最近なんだけど……父さんの味音痴っぷりは正直、頬の筋肉が痙攣してしまうくらいには凄い。

 今までそれを知る機会がなかったのは、今まで食卓に並んできた物の殆どがレトルトか、店屋ものだったからだ。

 俺も漸く今年で小学六年生になる。

 流石にそんな物ばかりを毎日食べていれば体に悪いだろうという事くらいは理解できる。

 だから俺は先週言ったのだ。そうとも、俺は父さんにこう言ってやったのだ。



「父さん、もうちょっとくらい栄養バランス考えて食事摂ろうぜ? 父さんだったらやろうと思えば何でもできるだろ」と。



 父さんは最初こそ俺の言葉に眉間のシワを集めたが、数秒もしない間に「そうですね……」と言って頷いてくれた。

 しかし俺は後に、この言葉を深く悔やむ結果となる。


 「もう15年も経っている事ですし……きっと、大丈夫ですよね。うん、ちょっとはマシになってる筈……」


 この時父さんが漏らしていた呟きに、もうちょっと気を配っていれば良かった……






 その日の晩、珍しく食卓には手料理らしき品の数々が並んだ。

 小学生の殆どが好きと言っても過言ではない定番メニュー。

 ハンバーグに並んで人参のなんか……煮付けっぽい奴。そして俺の言葉通り栄養価のことも考えてポテトサラダがボウル一杯に、プチトマトが三つ。

 学校の給食と学校以外で見た、初めての品々。俺はそのあまりにも美しい見た目に、父さんの事を改めて凄いと尊敬した。


 父さんは頭も良く、運動も出来て歌も上手い。そんでもって当然の如く外見も整っている。本人はどうも自分の顔をコンプレックスに思っているようだが、別にそれはそれで良いと俺は思う。

 確かに初めて両親の手紙を読んだ(読んでもらった)時、その勘違いには知らず口が釣り上がっていたが。

 父さんは初対面の人が見れば女と勘違いしてしまいそうな程整った、女顔だ。

 コレ、父さんの前で言ったら凄いボコられるから禁句ね。


 それなのにこうも料理が上手いとは……

 もう、この人は完璧超人なのではないだろうか。

 半ば本気で疑った俺は、父さんの作った見た目鮮やかな料理達を、なんの疑いも持たず口に運んだ。

 口内でハンバーグを咀嚼した瞬間に溢れ出た肉汁、そして食べたことのない未知の味。

 あの衝撃は、今でも俺の口内に蘇ってくるようだ。


 気が付いた時には、翌日のお昼頃になっていた。

 その日が本当に春休み期間中で良かったと、俺は変に真面目な感想を抱いてしまったのを覚えている。

 そして、その日の空が妙に赤く感じたのも、俺はちゃんと覚えている。

 父さんの作った料理は、見た目と相反しクソ不味かった。

 いや、不自然な位に甘ったるかったと言った方が正しいのか。


 やっぱり父さんも人の子だったんだな。











「父さん、今日も料理の練習やってんの?」

「あ、もう起きたんですか銀時。今日は馬鹿みたいに早いですね」

「……馬鹿は余計だって」


 ふわぁ~。欠伸を零して背伸びをし、ノロノロと寝起きの足取りで椅子に着けば父さんも嬉しそうに此方へと歩いてきた。

 カタンッ


「おはよう御座います」


「……はよう」

 目の前に置かれた皿に意識を持って行かれつつ、取り敢えず朝の挨拶だけはしておく。


「大丈夫ですよ銀時。今日は味付けをなんにもしていないただの『握り』ですから。醤油と海苔を付けて食べれば白飯と一緒です」


 なら、態々握る必要なくないか……?

 心の中では一応ツッコミを入れてみるが、朝から俺の為に作った朝飯に文句を付けるのも気が引ける。

 俺は「あ、そう……」とだけ呟き、目の前の海苔を醤油に浸け、それを『お握り』に巻いて口を開けた。


「で、今日はなんでこんな早い時間に起きたんですか。低血圧の銀時にしちゃ珍しいじゃないですか」

「……朝練」

「朝練? おかしいですね。私の記憶では確か、毎週火曜日と水曜日が朝練だったはず……」

「いや、昨日までは確かにそうだったんだけど、昨日になって急にヅラの野郎が……」

「小太郎? どうかしたんですか……?」


 松陽の質問に銀時は昨日のことを思い出し、つい反射的に表情を苦くさせた。

 そんな銀時の反応に、松陽は仕方がなさそうに一つ苦笑を漏らしてから、そっと何も言わず銀時のコップにお茶を注いでやった。

 銀時は目の前へと差し出されたコップを手に取り、一服仰いでから昨日あった出来事を思い浮かべてみる。

 そう、それは昨日の部活中での出来事…………






『貴様は本当に何時までたってもだらしがないな。授業中は基本寝てばかりと耳にもする。

 現国と体育だけは、どうやら真面目に授業を受けているらしいがな。 んー……俺が考えるに、それもこれも全部、貴様が松陽先生に頼りきっているからではないか?

 そうだ!! ここは一つ、物は試しという奴だ。明日から毎日朝練を始めてみよう。

 まずは早寝早起き、そして心身ともに健康になった暁には、貴様の自堕落な生活も少しは改善する筈だ!!

 安心しろ銀時! 俺達もお前の朝練生活に付き合ってやる!!

 なんたって俺達の仲だ、別に遠慮する必要はないぞ!!』






 そう言いながら迷惑な高笑いを上げた昨日の出来事、ヅラの事を思い出して銀時はピキリと額に青筋を浮かべる。

 ヅラの後ろでは剣道部の後輩達も、迷惑そうに顔を顰しかめていた。有難迷惑とはまさにこの事だろう。

 銀時は何時までたっても昔と変わらないお節介な幼馴染に対する苛立ちを、一つも隠そうとせず目の前の『お握り』を掴み取った。


「…………どうやら、小太郎も相変わらずのようですね」

「相変わらず過ぎて俺が迷惑だ。アイツの電波加減は好い加減何とかしねーと」

「まー、そこは気長に待ってみましょう」

「無理だろ。気長に待った結果がコレだぞ父さん」

「きっとコレからですよ、小太郎の成長期は」

「いや、それはぜってーねェと思う」







…………うん、ここまで書いて力尽きた。

ようはね、銀時様がもの凄く料理上手、菓子作り上手であると言う話が書きたいがための小説。



大まかな設定は、銀時様含む攘夷組三人は同じ高校の剣道部所属。

実の両親に捨てられた銀時様は松陽先生に拾われた。

松陽先生は料理がものすごく下手くそ。

成り行き上、料理を覚える必要があった銀時様は生来の器用さが甲を制した。

松陽先生は自分の料理ベタを直そうと苦労しているが、中々上手くならない。


最後のオチは、学校で料理が美味いとチヤホヤされた晩、松陽先生が出してくれた銀時様の大好物を目にして、本当に美味しい料理ってのは、こう言うモンなんだよな……的な事を思って終わり。






自分を思っての松陽先生の心に銀時様が心打たれてたらもうそれでいいよね。

っていうのが書きたかった…………


いつかシリーズ化してみたいとも思うけど、とりあえず設定と導入部分だけここに放置してってみようと思う。

だれか続き書いてくれないかな、これ。




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