「本当に、お前はそれでいいのか?」
昔馴染みが掛けてきた鼓膜を撫でる言葉の不快感に、思わず顔を歪めた。
「良いもなにも、他の道は残されちゃいねーだろうが。お前らが戦に出るっつってんだ……でっかい祭りにゃ三人で仲良く参戦と決め込もうや」
その顔を隠しもせず、真剣な目で口角を吊上げれば、今度は昔馴染みの方が顔を歪めた。
腕を組み、こちらを窺うようにして見る視線は、数秒後には瞼の下に隠されたが、それでも昔馴染みの顔に浮かぶ険しい表情に変化はない。
こちらが何を考えてるのか、それが分かっている上で浮かべているのだろう。
憂いにも似ているその表情から逃れるように背を向け、空に輝く淡い光を片隅に、さらりと裾を撫でていく風の音に耳を傾けた。
風は雲を運び、常に空の模様を変化させる。
優しい春の風は、この薄暗い夜にはぴったりだ。
雲の隙間から今か今かと顔を覗かせ始めている三日月を尻目に、申し訳ないとも思ったが、優しい暖かな春の風は、記憶の中にいるあの人を連想させる。
風と淡い光に満ちた夜は
攘夷戦争に参加する前の幼なじみ組の話の書きかけ。こんなの書いてたっけってなる程度には記憶にない。
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