――――お前等さ、聞いたかあの“噂” ――――噂? ……あぁ、例のアレか? ――――そうそう。また出たんだってよ。 ――――なんだよ、そのー……例のアレって? ――――は、お前知らねーの? アレって言やぁアレだよアレ。例のあいつ等の事だよ。 ――――だから何、そのあいつ等っての。 ――――っちょ、マジかよ!! マジで知らねーのお前? ――――最近ここらを騒がせてる“グループ”だぜ!? ――――グループ? ――――そうグループ! グループ『カラー』!! ――――…………知らねー。 ――――嘘、マジかよ。信じらんねー!!
――――今時『カラー』を知らねー奴なんてのは、そうはお目にかかれねーぜ!? ある意味お前、希少価値高いよな。 ――――な、なんだよさっきから『カラー』『カラー』って!! それ、色の事を言ってんのか!? ――――そうだぜ。『カラー』ってのはあいつ等の色のことを指してんだ。 ――――あいつ等には名前なんかねーのよ。 ――――周りがあいつ等を色で呼ぶから『カラー』で広まってんだ。 ――――……なんだよそれ、そんなんで“グループ”って言えるのかよ。 ――――あぁ、あいつ等はそんなんでも“グループ”って言われてんだよ。 ――――なんで? そんなに数が多いのか? ――――いや、むしろ逆だ逆。 ――――逆? なにが? ――――人数が多いんじゃない、逆に少ねーんだよあいつ等は。 ――――少ない? 一体何人くらいで構成されてるグループなんだ、それ。 ――――四人。 ――――…………ハ? ――――いや、「八(は)?」じゃなくて四人。 ――――そうそう、あいつ等は全員で四人。 ――――いや、俺もそっちの意味で言ったんじゃねーんだけど。 …………にしても、たった四人? それ、マジか? ――――そう! ――――たった四人! ――――それなのに!! ――――“グループ”って言われてんだよ!! ――――…………マジでか。いろんな意味でスゲーな、それ。 ――――だろ? ――――しかも! 噂じゃ総勢六十人の構成員を誇っていたあの『スペース』を潰したってらしいんだぜ? ――――はぁ? あの『スペース』をたった四人でか? それは幾らなんでも話を盛りす…… ――――いや、たった三人だ。 ――――へ? も、もう一人はどうしたんだよそれ。 ――――噂じゃ道に迷ってたらしい。 ――――…………迷子? ――――あぁ、噂じゃ『赤』はスッゴイ方向音痴らしいんだ。 ――――『赤』? それが『カラー』ってさっきからお前達が言ってる連中の一人なのか? ――――そう。 ――――残りの三人は『青・紫・白』だな。 ――――なんか、共通点がありそーでまったくない色だな。 ――――まーな。 ――――俺もそう思う。 ――――なんでそいつ等、そんな色で定着してんの? ――――んー……色、かな? ――――たぶん、色なんだろうな。 ――――はぁ? 何言ってんのか意味分かんねーぞそれ。 ――――いや、だからそのまんまの意味だって。 ――――『カラー』の奴等、それぞれが通称されてるその“色”が特に印象的なんだよ。 ――――『赤』は毎回赤色の服を着てるらしいし。 ――――『青』は…………よく分かんねーけど。 ――――『紫』は光の反射具合でその髪の毛の色が紫に見えるんだってさ。 ――――じゃあ『白』は『赤』と同じで毎回白い服でも着てんの? ――――いーや違う。 ――――『白』のは『紫』と同じだよ。 ――――『紫』と? ……って事はなに、そいつ、まさか白髪かなんかなの? ――――噂じゃそうらしい。 ――――人によっちゃあ「アレは白と言うよりかは銀色に近かった……」って、 そーゆー奴もいるらしいがな。 ――――……まぁ、所詮は噂だろ? それ。 ――――まー、噂だな。 ――――…………んで、その『カラー』がどうかしたのかよ? ――――それはさっき言ったろ? あの『スペース』を潰したって。 ――――なんだ、そんなことだったのか。確かにそれは驚いたけど……。 ――――あー、まぁな。……けど、俺が言いたかったことはそこじゃないんだ! ――――なら一体どこだよ。 ――――ここ。 ――――はぁ?? ここ……って、何が? ――――だ・か・ら! 『カラー』は『スペース』を潰すためにここに現れたんだって! この江戸市……歌舞伎町に!! ――――マジで!? ……そんなスゲー奴等がか? ――――あぁ、だから興奮してんだよ!! ――――……確かにな、ウザイくらいのハイテンションだ。 ――――えっ、や、ちょっ!! そう言う言い方はちょっと良くないんじゃな…………。 ――――お前はその存在自体がウザイからな。 ――――ヒデー…………。 ――――でもま、確かにそれが本当だとしたらテンション上がるな。 ――――だろだろ!! ――――あぁ、ホントに…………憧れるな。 中学時代に囁かれていた噂。 しかし高校を上がった頃にはもう、彼等の噂は一切耳にはしなくなっていた。
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