昔々あるところに、人々に忌み嫌われている小さな小さな仔鬼がおりました。
仔鬼はとても異質な色を持って生まれ、それが故に、人々からは忌み嫌われ続けていました。
例えるならば、仔鬼は白。
清廉潔白。
そう、白とは純真無垢で清らかなイメージを持つもの。
仔鬼の心はまさにそれ。
仔鬼は皆が忌み嫌っているほど、邪な心を持つ存在ではなかったのです。
目の前で傷ついているものを見れば放ってはおけず、自分の身など顧みず助けに行く。
そんな仔鬼の心はまさに白色と表現するに相応しいものでございました。
それに比べ、人間の心は仔鬼とは相反し、薄汚れて荒みきり、仔鬼をその異質な容姿だけで迫害という非道な行いで追い込んだのです。
彼らは、自分たちこそが正しいと慢心し、自身の非道な行いを正当化してきました。
それは、仔鬼の体だけでなく、その心までもを深く傷つけていく行い。
仔鬼の手によって助けられた者も、すぐに仔鬼へ牙を向ける。
そして、仔鬼はその類まれなる運動神経と防衛本能により、自身を手に掛けようとしてきた者たちを、軽く、返り討ちにしてきたのです。
けれど、それこそが仔鬼が最も心をすり減らすこと。
仔鬼はたとえ自分が傷ついても、その他一切のモノが傷つくことを嫌う心優しきモノ。
白の仔鬼は傷つきました。
なぜ、この身はこの世に在るのか。
いつしか、仔鬼の心にはそんな疑念が湧き、やがてそれは、仔鬼の心をひどく傷つけすり減らしていったのです。
自分はこの世にいらない、必要とされていない。
傷つけることしかできない。
殺めることしかできない。
救える命も、結局最後には自分で奪ってしまう。
自分が生きている意味、それはいったい、なんなんだろう…………
仔鬼は悩み、苦しみました。
ですがその悩み、苦しみは決して晴れることなく。
次第に仔鬼は、そんな事を感じる心を、疎ましく思うようになっていきました。
その耐え難い苦しみから、逃れるために。これ以上、傷ついてしまわないように。
仔鬼は心を、気がついた時にはなくしていました。
心がなければ苦しくない、悲しくなんかない。
目の前で人が死んでも、傷つかずにすむ。
そんな思いからか、本能的に自身の防衛を図ってか。
仔鬼はある日を境に、その顔から喜怒哀楽の表情を作らなくなってしまいました。
村人の誰かが、盗賊の誰かが、旅人の誰かが、仔鬼を見ては気が動転し咄嗟に刀を振るってしまい、仔鬼はそれを容赦なく斬り殺してきました。
命を狙われたから殺した。
それがなんだ。
仔鬼は人の心をなくし、それ故に仔鬼は頭のどこかで傷ついていたのかもしれません。
そんな仔鬼の運命が変わるまで、時はもう少しかかる。
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