ジンジンと体の節々に鈍い痛みが走っている。
いや、もっと分かりやすく言えば体中がズキズキと痛い。
地形の悪い所で一夜を過ごすといつもこれだ。
まだ薄暗い時間帯に目を覚ましたからか、朝の気配はまだまだ遠い。それを肌で感じた子供は、体を起こそうとして苦痛に顔を歪めた。
「っ……」
口から漏れたのは瞬間的に走った体の痛みに耐えるような呻き声。
子供は痛みに耐えつつ、薄暗く目を開いて自分の体を見た。
光の少ない時間のせいか場所のせいか、正確な色彩までは分からないが、左腹部の衣が少しだが茶色に近い黒色に染まっている。
まだ傷口は塞がりきっていなかったのか。
子供は木々に生い茂っている木の葉を見上げ、静かに嘆息を零した。
子供には名前があった。
生まれながらにして持つその銀色の髪から由来した名──銀という名だ。
子供は自分の名前が大嫌いだった。
銀はその名の通り、生まれついた時から銀色の髪を持って生まれた。
銀の周りにいた人々はその銀色を忌み嫌って、銀のこともまた同様に蔑んでいた。
なぜこんな名前をつけたのか。
我が身をこの世に産み落として両親にそれを聞いてみたくとも、銀の両親は銀を産み落とした後に二人共命を落としている。
母は元々体の強い方ではなかったらしい。銀の出産に耐えられず、銀の髪色を死ぬ間際に見て「ぎん……」と呟き、死んだという。
父は村の者になぜこんな気味の悪い子を産ませたのだと強く責められ、翌日首を切って自刃したらしい。
ばあさんに育てられ、ばあさんが死んで一人になって鬼と呼ばれるようになり、腹部を怪我して、先生に拾われ、バカ二人に出会って新しい生活が始まる的な短編。
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