top of page

​白 銀 の 戦 慄

シリーズライン.gif

[銀魂]少年の思い

  • 執筆者の写真: siversou
    siversou
  • 2022年10月14日
  • 読了時間: 2分

「どうすりゃいいんだろ」

 白い雲がひとつとして浮かんでない晴天。

 そんな日和にポツリと呟かれた言葉。

 空を見上げながら思わず口をついて出た言葉に、慌てたように彼は自分の両手で口を塞いだ。

 歩みを止め、ぶんぶんと首を振ってあたりを見渡す。

 誰もいない。誰にも今の言葉を聞かれていないことを確認し、彼は安堵した。

 周囲には人っ子一人おらず、あるのは深く生い茂っている緑のみ。

 万緑の森が彼を囲っていた。


 最近、母の視線が痛い。

 元からそうであった事は否めない事実であるが、ここ数日、そういった視線により剣が交じるようになった気がする。

 時々、それに恐怖すら感じる。

 正直実の母親からそんな目で見られるのは悲しいし辛い。

 どうすれば自分のことを認めてくれるのだろうか。

 彼の最近の悩みの種はもっぱらそれだ。

 先の呟きもそんな思いがついつい口から零れ落ちてしまったのだ。

 本当にどうすればいいのやら。

「ハァ……」

 今度は答えの出ない悩みに事に息詰まり、溜息が漏れる。

 しかし、いつまでもこうして足を止めているわけにもいかないので、彼は止めていた歩みを再開させた。

 今だって彼が一人こんな森の中に来ているのは、母や父のためであった。

 どちらも自分のことを嫌っている。

 それでも干害が続き、水が尽きかけていたから。水をとってくれば喜んでもらえると考えて。

 一人で不安ながらも、彼は川を求めて森の中を彷徨い歩いていた。

 一歩歩けば足の裏が傷んだ。

 森の中を歩く彼の足には、なにもなかった。

 草鞋なんて贅沢なものを、彼はもらったことがない。

 幼い少年でしかない彼は、そんな足で森の中を歩き回り、足に傷を作ってもなお、二人のためにと歩き続ける。

 歩くたびに血は滲んだが、二人から突き刺さる視線に比べれば大したことないと、彼は足の痛みを意識の外へととばした。

 少年である彼の健気な思い、それを両親はどう思うのだろうか。



認めてほしいと悲観するでなく努力を続けるも、全て虚しい結果に終わる子銀の、辛いだろうに本人は「もうちょっと認めてもらいたいよなー」程度にしか思ってないような話を書きたかったなって。

最新記事

すべて表示
【銀魂】ちょっと変わってる大五郎くん

大五郎くんは、ちょっとだけ変わってる。  普段はボーと、ちょっと気の抜けたような話し方。  でも、たまに人が変わったようになるの。  なんていうんだろ……ハードボード?  みたいな? 酸いも甘いもしゃぶりつくした大人!!  みたいな。  なんかね、そんな感じになるの。...

 
 
 
【銀魂】ヅラが銀時と再会する前

SS更新のために最近はつらつらとまとまりのない文章を生産するだけになってきましたが、ふと思い出しました。 自分の元々の二次創作の始まりは、こんな書き方だったな、と。 この書き方、自分の中にあるキャラクターの思考を勝手に想像して思うがままに書けばいいので、凄い筆が乗るんですよ...

 
 
 
【銀魂】観察の仕事

山崎退(やまざき さがる)。  泣く子も黙る武装警察真選組の監察、それが僕の仕事だ。  監察の仕事は単に腕っぷしが強ければいいというものではない。  周囲に馴染み、ごく自然に違和感を与えず目的の情報を集めて精査し、必要な情報を上に流す。...

 
 
 

コメント


bottom of page