[銀魂]百華の一人
- siversou

- 3 日前
- 読了時間: 4分
最後足止めをして死んだ百花モブ。
「晴太殿!!」と言ったモブ百華さんに思いを馳せて書き殴ったSS。
吉原でもあの鳳仙様に幼き頃から何かと縁があったらしい日輪様が、ついにこの吉原を逃げ出したらしい。
なんでも、同じ遊郭に住まう遊女が、子供を孕み、あまつさえ同じ楼閣の遊女総出となって子供を抱き上げたのだとか。
そんな子供を、あの鳳仙様にでさえ御大層にも慈悲の言葉をかけようとし、何度も折檻されるという経験をしているらしい日輪様が、こんな光もなにもない常世の鳥籠に置いておくわけもない。
だからといって、よりによってここから地上へと子供のためだけに出ていくなんて。
日輪様……貴方にとって、その子供はそれほどの存在なのか。
*****
姉さまが天人に殺された。
あの子供を外に逃がすための道を教えたのが、姉さまだったらしい。
いや、他にも多くの遊女たちがあらゆる伝、手段を使って、あの子供を逃がしたという。
処断したのは百華でも鳳仙様でもなかったと聞かされたが、そんなことどうだっていい。
日輪様は足を奪われた。
姉さまは命を奪われた。
他にも多くの遊女たちの自由が、希望が、命が絶たれた。
そして、まだ遊女としては未熟者だ、表には出せないと庇ってくれていた姉さまが処分されてしまい、私の幸せな日常も、ついに終わってしまった。
(客を、取らなきゃ……)
ここで生きていく以上、生き延びるために、客をとって、生きていくしか。
*****
一度で良かったんだ。一度でいいから、日輪様が逃がし、姉さまが手助けし、地上へと行った子どもが、晴太殿がどうなったのか。
私たちと違って、明るい日の下、元気に過ごしているか、見てみたくなった。
こんな光も差さない常世では、心もいつしか暗く淀んでしまう。
こんなところで淀まずに希望を持って生きていられた日輪様に姉さまたちは、本当に凄い。
私は、ダメだ。このままでは、何のために生きているのか分からなくなってしまう。
一度でいい。日輪様や姉さまが希望とした光を、この目で確かめたかった。
しかし、そうことがうまく進むはずもない。
掟破りは処分される。
この吉原でも有名な日輪に並んで、遊女たちには日輪の次に馴染み深い、親交とある種恐怖の象徴、死神太夫──月詠。
彼女は日輪を守るために、幼い頃に己で顔を傷つけ、この吉原の番人となった。
あぁ、私は逃げられなかった。陽の光を拝むことができなかった。
それでも、一度やると決めた以上、それが失敗したからといって悔いはない。
ただ生きているだけの生を、終わらせられたのだから。
(……あぁ、顔が痛い)
死神太夫、貴方も、遠い昔に顔を傷つけた時には、これほど痛かったのですか。
「ぬし、何故外に出ようとした。こうして処断されること、ここ吉原に住んでいる以上、知らぬはずはなかろう」
「一度でいいから、見てみたかったんです」
「見てみたかった?」
「はい。あの日輪様が、私の姉様が繋いだ……希望の灯を」
「そうか」
「悔いは、ありません。ひとおもいに、殺してください」
「……わかった」
次の瞬間、痛みとともにいると思っていた私の命は、繋がれた。
「遊女として生きるための顔を失ったぬしは、今日この場で死んだ。地上に出ることは叶わんが、わっちと共に、この狭い常世で燦然と輝く太陽を、共に守ってくれぬか」
「しにがみ、だゆう……」
「わっちの名は月詠。死神太夫であり、この吉原を守護する、百華が頭領じゃ」
*****
あぁ、帰ってきた。
あの子供が。
日輪が命をかけて、救い出そうとした子どもが。
なんで、なんで戻ってこられた。
何故、帰ってきてしまった。
これでは、私たちのこれまでが、無駄になってしまう。
日輪様が、姉さまが、頭が、必死に紡いできた細い細い希望の灯。
消させやしない。曇らせやしない。
あたしらが、この希望、繋いで見せるんだ。
「晴太殿!!」
足をとめないで。立って、進んで。
どうか、生きて。
私たちはそのために、これまで頑張ってきたのだから。
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