「…………すまねぇ、護りきれなくて」
苦々しげに吐き出された言葉。
既に息を引きとていた男は、その言葉が誰に向けられたものなのかも知らず、ドサリと鈍い音を立てて乾いた地と沈んだ。
ビュウビュウと音を立てて風は吹き荒れる。
砂煙舞い上がり、数キロ離れたところから仲間の雄叫びが聞こえる。
先程までの戦いで乱れていた呼吸を、スゥッと息を吸うことで整え、刀を握る手に力を込める。
怒声ともとれる雄叫びの方へ向けて、静かに細められた瞳。
次の瞬間、夜叉は走り出した。仲間の戦う場所へ。
駆け出した夜叉は、血に塗れ赤く染まった中であっても、眩い光を放つ銀色を揺らした。
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