薄暗い部屋に布団がひとつ。
まだ日も明けきらぬ朝早い時間だ。
当然布団はこんもりと小さな山をつくり、中にはまだ寝入っている者がいると傍目から見てもわかる。
03:07
部屋の中に置かれたジャスタウェイ型の時計が現在の時刻を指し示す。
朝早い……人によってはまだ夜とさえ呼べる時間帯に、万事屋銀ちゃんが主、坂田銀時は深い深い眠りの底にいた。
スー
おや、誰かが襖を静かに開ける音がする。
「……七分の寝坊アル」
声から察するに、この声は神楽ちゃんかな?
ペタ、ペタ……
ペタ、ペタ……
足音を極力立てないように注意を払っているのか、万事屋に響く足音は薄暗い部屋の闇にとけ、音は忍び寄るように銀時の部屋の前まで行くと、そこでぴたりと止まった。
スー
「まだ寝てるアルな」
スー
神楽ちゃんは銀時の様子を確認してすぐに襖を閉めた。
「定春!」
囁き声で定春の名を呼ぶ神楽ちゃんに、定春も開けっ放しにされていた押入れの一段目でゆっくりと目を開けた。
のしりと重たい体を起こし、押し入りからのっそりと出てきた定春に、神楽ちゃんは銀時の部屋に顔を向けつつ声をかける。
「それじゃ定春、今日の計画は打ち合わせ通り……」
定春も神楽ちゃんに倣うように銀時の寝室へ視線を投げ、大きく首を振って目を鋭くさせた。
「銀ちゃんの足止め、誘導任務を任せたアル!」
「ワン!」
*****
「定春! ストップストップ! ストーップ!!」
江戸は歌舞伎町。無法者共が集まる町に、銀時の声が響き渡っていた。
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