[銀魂]魘魅の見る悪夢

煤けた世界だ。
色が極限まで減らされた、白と黒に支配された世界。
その中で異色な赤色だけが目に痛いほど網膜を焼く。
知っている顔も、知らない顔も平等に倒れていく。
一度近づけば色味をなくし、距離を縮めれば乾いた音と共に赤が散る。
あぁ、これは夢だ。
こうなってからはもう何度も見ているいやな夢。
何処にも救いのない夢。
この世界では体の主導権が戻ってくる。
だが、所詮夢でしかないこの世界で体の主導権を取り戻せたからといって、一体何だというのか。
夢だと言えども、人が苦しみに溺れ、死んでいく様など見ていたいものではない。ならば、この場に長くとどまっている理由もないと、初めはすぐに自刃していた。
しかし、この世界は繰り返す。
夢の世界だというのに、何度も死に戻るのだ。
この世界を終わらせられないならと、今度はみんなの顔を近くでもう一度見に行こうとした。
しかし、距離が縮まっていくほど、みんなの症状は悪化する。
一歩、また一歩。足を進める度に咳き込み、髪に色が落ちていく。
一歩、また一歩。顔が良く見えるようになる程、顔色の悪さが目につき、口から漏れ出るか細い呼気が耳に届く。
そして、手が届きそうになるところで皆、崩れ落ちた。
悪夢だ。あぁ、いやな悪夢だ。
いつだってこの世界の終わりが全てが白く覆われて終わる。
そして今日も煤けた世界の色がとけ、白に塗りつぶされて終わった。
目を開けて見える空はやはり煤けている。
青い空は昔と何も変わらないハズなのに、この目に見える世界は夢でも世界でも変わらず煤けている。
自分の意思とは関係なく、目を覚ました体は凭れ掛かっていた木から離れ、歩みを進める。
目的は人の多い江戸の町だろう。
見晴らしのいい場所で、体は一度止まる。
眼前に広がるのは都市としての機能をほぼ完全に停止させた江戸の町。
あぁ、夢の世界といっしょだ。
現実も、無情なほどにいつもと変わらない、悪夢の続きだ。
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