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​白 銀 の 戦 慄

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[銀魂]目も眩むほどの青[後編]

執筆者の写真: siversou
siversou
6月27日
読了時間: 3分

梅雨をテーマに書いた【目も眩むほどの青[前編]】の続きSSです。



【目も眩むほどの青[後編]】


「……おい」

「…………」


「なぁ」

「…………」


「おいってば」

「…………」


「おい、聞いて……聞こえてんだろ、松陽っ!」

「……はい、聞こえてますよ、銀時」


「ならさっさと返事しろよ」

「……」


「……だから黙るなって」

「……」


「……はぁ、もういい」


 松陽と銀時は、緑深い山の中を歩いていた。

 松陽と出会い、ついて来いと言われて引かれるようにその背を追った銀時は、その後松陽と各地を歩き回りながら生活していた。

 特に当てもない二人旅。

 まるで居場所を求めるように。そのくせ、何処にも根付くつもりがないように旅をする松陽と共に旅をし始めた銀時は、松陽の人となりはなんとなく分かってきたが、未だに松陽が何を考えているのかは読み切れずにいた。

 今だってそうだ。

 この山の麓の村まで来た松陽は、ふと山の方に視線をやり、なんの前触れもなく微笑みを浮かべたかと思うと、唐突に


「こっちです。ついて来てください」


 とだけ言い、この山を登り始めたのだ。

 この山の中に食い物や村があるとも思えない。

 いや、動植物はいるかもしれないが、わざわざ食い物をを求めるために山中に入ったとは思えなかった。

 そのため、なぜ今山登りをしているのか声をかけ続けていたというのに、松陽は銀時の問いには答えず、ただ歩みを進めるだけ。

 いい加減、銀時も理由を尋ねても無駄だと悟り、山中を行く理由を問うことを諦めることにした。

 松陽は山を登りながら、後ろでやれやれ……と諦めの表情を浮かべて背をついてくる銀時を見て、再度笑みを深めた。


「そろそろです。実は、銀時に見せたいものがありまして」

「見せたいもの?」

「はい。たしか……この辺りだったはずです」


 そういって周囲を見渡しながら足を止めた松陽に倣い、銀時も足をとめ、視線を上げた。


「──?」

 一瞬、銀時の視界に異質な青が映りこむ。


「あ、あそこです」

 言いながら歩を進める松陽の後ろを追うも、その場に立った銀時は、半ば呆然とした様子で声をもらした。


「なんだ、ここ…………」


 視界一面を覆う、鮮やかな……否。鮮やかが過ぎる、青。

 青が視界に滲み、瞬きの後に、瞼の裏に青が弾けて白んだように見えた。

 まさに「目が眩むような青」と表現すべき青い紫陽花たちが、我こそはと思い思いに咲き誇る姿がそこにはあった。


「“紫陽花”という花です。ここまで見事な青い紫陽花は、滅多に見られませんから」


 松陽の顔は、どこか懐かしむような、それでいて妙に誇らしそうに。

 滅多に見ない感情の滲むような松陽の表情に、銀時はゾクリとしたものを背中に感じた。


「……ここ、お前にとって特別な場所かなんか?」

「特別ってほどでもないですが、昔に何度か、ここに来たことがありまして。その都度、この紫陽花には肥料をちょっとね」


「へぇ、意外だな。オレぁてっきり、お前は花より団子なタイプかと思ってたぜ」

「まぁ、否定はしません。花は腹に溜まりませんし」


 そんなことを言いながら紫陽花に手を伸ばす松陽の姿が、目も眩む青のせいで、元から松陽の色素が薄いせいもあってか、一瞬とけて消えてしまうように錯覚した銀時は、咄嗟に松陽へと手を伸ばした。


「……どうしたんですか? 銀時」


 自身の手首をつかまれる前に銀時を振り返って見た松陽の目には、普段と変わらない、優しい、それでいて力強い色が宿っていた。


「あ、いや……」

 銀時は松陽から視線を反らし、松陽の後ろに咲き誇る紫陽花に目をやった。


「なんでもない。花も十分めでたし、そろそろ行こうぜ。腹減った」

「……そうですね、もう山を下りましょうか。そろそろ昼時です。下りる頃には太陽も傾き始めるでしょう」


 銀時の視線が鮮やかな青に注がれているのを見た松陽は、銀時の提案に頷き、空を見た。

 空には、色鮮やかな紫陽花には負ける、透き通るような青が広がっていた────

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